第2回 「嘘は見破れる」はウソだった

 村井さんは、論文の中で、こう述べている。

〈我々は、毎日の生活の中で、うそをつき、その一方でつかれたうその多くを見逃しながら、円滑なコミュニケーションを営んでいるのであろう〉

 コミュニケーションを円滑にするための嘘というのは確かにあると思う。そして、人間が嘘について適度に鈍感だからこそ、そのようなささいな嘘が有効なのかもしれない。

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 しかしながら、どうしても嘘を見破りたい局面というのはある。いや、それどころか、「嘘の心理学」というと、一般の関心はむしろ「嘘を見破る」「だまされない」ことに集中するようだ。

 ネット上でもあちこちで見られる方法、「視線」やら「口元」やら「足元」やら、嘘をついている(かもしれない)人を観察して見破るというのは、どれくらい現実的なのだろうか。

「結論から言うと、人は嘘を見破るのがそんなにうまくないんです。多くの場合、発言を聞いたり行動を見たりして、嘘をついているかどうか見破ろうとするわけですよね。こういうものは、嘘に関連する『非言語的行動』の研究として、たくさん検討されてきました。その結果、正答率は5割を少し超えるくらいだと繰り返し指摘されています。実際には、いろいろな研究結果があって、ある研究では高い正答率で見破ることができたとしても、研究間で常に一貫した結果というわけではないんです。ですので、1つの研究結果だけで語ると危険です。たとえば、ある1つの研究結果では目の動きと嘘の関係が非常に強いという結論が導かれたとして、それを信じてしまうと、無実の人の目の動きを見てその人のことを嘘つきだと決めつけることになったり、いろいろ問題が出てきます」