「グループ療法で、患者さんがやってきて『先生、また今朝シャブやっちゃったよ』っていうふうに告白したんです。そしたら、担当していたセラピストがどんな対応したかっていったら、ニコニコしながら『よく来たね』ってハグしたんですよ。『やろうよ、頑張って。よく来た』って言って。これは説教してきた私とは正反対なんです。やっちゃったって言いに来たときこそ、ハグっていうのは大事なんだろうなと思いました」

 罰は効かない、説教も効かない。むしろ、「やっちゃった」人には「よく言ってくれたね」とハグを。

 実にアメリカらしいといえばそれまでなのだが、松本さんのSMARPPでも、ハグはともかく、「やっちゃった」と告白することはむしろ褒められる。

 それでは、SMARPPとはどんなプログラムなのか。やっとそこに入っていける。SMARPPを日本語でざっくり言うと「認知行動療法による薬物依存症治療プログラム」のことだ。

SMARPPの最新改訂版ワークブック。
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「ワークブックがあって、これはもう市販されています。拘置所に差し入れられる本のベスト3に入っているんですが、大事なのはこれをグループで、読み合わせしながら、専門家と一緒に勉強していくことなんです。ワークブックは、むしろ患者さんと関わるための口実というか。市販されているものは全部で24セッションに分かれていて、それを週1回でやれば、半年間は通わなきゃいけないんですよ。その半年、逆に我々は援助の関係の中に彼らを引きとめることができるっていう」

 患者さんとかかわるための「口実」であるワークブックには、もちろん大事なことが書かれていて、拘置所でこれを読んだ人も(もちろん、単純に興味があって読んだ人も)、有益な知識を得られるだろう。

 ワークブックをめぐると、日付を記入する欄があり、これを読み合わせていくことが前提になっているのが分かる。第1回「なぜアルコールや薬物をやめなくてはいけないの?」、第2回「引き金と欲求」、第3回「薬物・アルコールのある生活からの回復段階 最初の1年間」というあたりからはじまって……第22回「あなたを傷つける人間関係」、第23回「強くなるより賢くなれ」、第24回(最終回)「あなたの再発・再使用のサイクルは?」に至る。

「なぜやめなくてはいけないの?」から始まる。
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