ここで、通院できた3割の人が、「褒められにくる」というのが象徴的だ。

 褒められる、つまり、「ドーパミンがドバーッと出る」ような状態を薬物で得てきた人たちが、医師に褒められることを目的に通ってくる。それは、ある意味、治療の一つの形かもしれない。薬物ではなく、人間関係の中において、その回路を発動させる練習というか。

「結局、覚せい剤をやめられなくても、通院しつづけた方が、予後がいいというのは、海外のエヒデンスでもしっかり出始めていたんです。それで、薬物をやめられなくても通えるプログラムを作れないかと考えていて、モデルになったのが、アメリカの西海岸のマトリックス・モデルという外来治療プログラムです。ここで大事なのが、外来、ということです。それまで依存症の治療というと、みんな入院入院って言ってたんですよ。家に帰った後の断酒や断薬をするための教育入院です。糖尿病の人たちが短期間内科に入院して、食事療法とかいろんなことを勉強しますよね。あれと同じで、それ自体は治療じゃなく、本番は帰ってからなんです。なのに、日本には依存症の外来治療プログラムがなかった。だから、ぼくらとしては、通いでできるプログラムをつくりたい。そのときにマトリックス・モデルっていうのが非常にフィットしたんですね」

 マトリックス・モデルというのは、コカインや覚せい剤依存症を対象にしたもので、外来であることと、グループワークを重視した認知行動療法的なアプローチを取るのを特徴とする。それらの要素は、松本さんが開発した「SMARPP(スマープ)」(のちに詳述)にも引き継がれている。

 ここでは、視察に訪れた松本さんが、はじめてそのプログラムを見た時の驚きを聞いておこう。

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