第4回 「依存症で失ったもの」は治療で取り戻せる

 かなり突っ込んだ内容を、専門家の指導のもとグループで読み合わせていくわけで、その過程で、認知行動療法的なアプローチをとっていることになる。認知行動療法というのは、認知(ものごとに対するとらえ方)の枠組みを変えることで、気分や行動を変化させようとする治療法だ。薬剤の乱用に悩む人にとって、薬をもって制することができるのは、ごく一部の事例(アルコールの断酒剤など)だけで、こういったアプローチの方が成果をあげている。

 そして、SMARPPのキモであるのは、こういったワークブックの読み合わせ、勉強会が、そのまま患者を支援の場に引き止める役割を持っていることだ。

「大事なことは、いつでもウェルカムの態勢なんです。失敗しても、来ないより来たほうがいい。孤立させずに、次もまた来たいと思えるようなプログラムにするっていうこと。お茶菓子なんかを必ず出して歓待しますし、尿検査の結果が陰性ならスタンプを押して、プログラムが1クール終わったら賞状を出したり。彼らは、家の中でいつも家族から文句ばっか言われて、周囲からさげすまれて、昔、一緒に遊び歩いた仲間も遠ざかり、今はとても孤独な生活をしてることが多いんですよ。プログラムの中で、あたたかい雰囲気に包まれて、気が楽になって、また来たいと思ってもらえればいいんです。その中で、我々と関わってる期間を延ばしていくと、多くの人たちは、この1クール終わる半年、あるいは2クール目に突入して、8カ月から9カ月くらいのところでかなり安定的な断薬状態になっているんです」

「大事なことは、いつでもウェルカムの態勢。失敗しても、来ないより来たほうがいい」
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 かつて有効な治療法がないと言われていた薬物依存症だが、今、突破口が見えてきた段階だという。

「もちろん、このプログラムだけでは油断できないんです。ですので、SMARPPのグループ療法の場には、実は回復支援グループの人も副司会者として入ってもらいます。薬剤使用から回復した人たちです。ある意味ロールモデルになって、電話番号なんかも交換して、例えば支援団体がやっているハイキングとか、ソフトボール大会とか、サーフィンしに行ったりとかね。一緒に遊んでるうちに仲よくなって、例えば夜中に薬を使いたくなって苦しくなったときに電話かけて、何とか危ないところを回避したりするんです」

 ここまで来ると医療ではなく、地域のサポートだ。それらがシームレスにつながることが、治癒にとって大事になる。