第1回 依存症は厳罰主義では解決しない

 意志の問題じゃない。

 人に頼れず、むしろ物(薬物)に頼ろうとしてしまうくらい傷ついた人。そういう人が薬物に依存する可能性が高くなる、と。

 ここで、はっとする。

 つまり、薬物乱用で検挙された芸能人についての過剰な報道は、薬物依存から立ち直ろうとしている人たちとって、やはり、自らが「みじめ」「情けない」「恥ずかしい」存在だと思い知らされることなのだ、と。

「結局、依存症って、人に依存できない病」なんですよと松本さんは含蓄深い言葉を述べた。

 人に依存できないがゆえにひとたび薬物依存のループにはまり込むと、本来、頼れたかもしれない人にもあきれられたり、見捨てられたりして、どんどん深みにはまってしまう可能性がある。悪循環の中で、再使用、再々使用してしまう。

「実際、覚せい剤の乱用は再犯がとても多いんです。初犯でも6割方の再犯率だし、50歳以上の方になってくると、84%とか言われてます。もう、ほぼ全員再犯するってことです。検挙される人数が多いけど、同じ人が何度も何度も繰り返し捕まります。なぜかというと、この病気は刑務所に入るだけでは治らないからです。覚せい剤依存症の人が一番薬を使いやすいのって、刑務所を出た直後なんですよ。その次に多いのが保護観察が終わった直後。結局、刑罰では再発をふせげない。縛りがなくなった瞬間にまた使ってしまうから」

では、依存症の治療法は?
[画像のクリックで拡大表示]

 では、罰では治らない依存症を治療するにはどうすればいいのか。永遠に刑務所に入っているのも量刑としてバランスにかけるし、そもそも非現実的だ。

 その点について松本さんは、「刑罰よりも地域内での治療を」と述べる。

 入口としては、医療機関や自治体が運営する精神保健福祉センターが提供する治療プログラムがあり、その先には、自助グループや、民間のリハビリ施設などがシームレスにつながっていくというイメージだ。

「薬物の自己使用犯の再犯防止には、地域内でのケアを長く続けることが効果的というエビデンスがあります。私たちが開発した治療プログラムは、SMARPP(スマープ)っていうんですが、まさにその入口にあるものです。平成28年の診療報酬の改定で、診療報酬に加算項目として追加されました。これ、国が薬物依存症に特化した治療法に、はじめて診療報酬の加算をつけたんです。これまでは単に犯罪だと思われていたんだけれども、同時に病気としての側面もあるということが、やっと伝わりはじめたのかなと思っています」

 松本さんたちが開発したSMARPPについては、あらためて紹介するとして、ここはさらに聞こう。