第3回 ヒトの脳はどのように時間を知覚しているのか
コンピュータのディスプレイには、単純な丸い図形が浮かんでいる。
その「丸」が画面に出ている時間がどれくらいかというのが、あらかじめ与えられている問いだ。
最初に提示される画面では、図形が何秒か継続的に提示されたあとで消える。
次に、同じ図形が点滅してから消えるのを見る。
さて、どちらの時間が長かったか。
後者の点滅する図形の方が、明らかに長く提示されていた。
しかし、実際には、提示された時間は同じだと知らされる。
結構、衝撃的だ。
錯視に似ているが、単純に錯「視」というわけでもなかろう。むしろ、時間知覚における錯覚、というのがしっくりする。
なぜ、チカチカ点滅するだけで、時間が長く感じるのか。謎だ。こんな単純なことで、ぼくたちが感じる「時間」が変わってしまうなんて!
「だいたい、1.2から1.3倍くらい長くなったと感じるみたいです」と四本さん。
点滅だけで時間知覚が2割、3割長くなる。
「これ自体はよく知られた現象で、いろんな人が報告しているんですが、じゃあ、なぜ、何でチカチカすると長く見えるのっていう説明には、いろんな説があるんですね。1つは、チカチカすると、そこに注意が向いて、自分の心的資源がより多く費やされるので、長く見えるんだとか。でも、わたしは、それじゃつまんないなと思って。なぜ時間が歪むのか、神経活動レベルで説明したいと思ったわけです」