第1回 錯視から入る不思議な知覚の世界

 毎年、東京大学からの応募があり、そこから複数作品が入賞しているのである。

 2016年で言えば、東京大学大学院総合文化研究科の島周平氏による「歯車錯視」。「並進運動をする歯車が、実際は回転していないのに回転しているように見える」というもの。

「歯車錯視」(制作:島周平)

 同じく、東京大学大学院総合文化研究科の田中涼介氏による「たまゆら錯視」は、「放射状の縞模様の下を、黄色と紺のドットが回転している」状態で、「しばらく注視点を見ていると、黄色のドットの回転だけが停止して見える」など、いくつかのパターンで実際の動きとは違う見え方をするのを示している。

「たまゆら錯視」(制作:田中涼介)

 ちなみに、ぼくのお気に入りは、2015年、やはり田中涼介氏が発表した「スイングバイ錯視」だ。ある円の接線上を直線的に運動するドット群があって(「作品」ではその円を地球に、ドット群を人工衛星になぞらえている)、ドットは、本来、直線運動をしているだけなのに、同時に3つ以上、同期して動かすと、まるで人工衛星がスインクバイ(大きな天体の近くを、軌道を変えながら通り過ぎること)しているかのように見える。

「スイングバイ錯視」(制作:田中涼介)

 3例を挙げたけれど、いずれもミステリアスで、本当に自分の目を疑う。しかし、どれだけ疑っても、我が視覚は、ありもしない歯車の回転を見出し、逆に回転しているはずの黄色いドットを止まっているように感じ、直線運動をグニャッと曲がった運動として認識する。くらくらする。

 そして、それらの錯視を見出したのは、東京大学大学院総合文化研究科というところらしい。