――K2のとき、ラルフさんは途中でベースキャンプに戻ったとうかがいましたが、それも夫婦だったことが関係していたのでしょうか。

 私たちの間では、仮に一方が途中で引き返す決断をしても、もう一方が登山を続けたいと思ったら、止めずに続ける、というルールを設けていました。ラルフが戻ったのは、彼自身が既にK2を登頂していたから、無理をしなくてもよかったんです。私は気力も充実していたし、行けると思ったから進みましたが、彼が私と同じ気持ち、モチベーションでなかったことが残念で割り切れないとそのときは思ってしまったんです……。もっとも、ベースキャンプから無線で天気予報などの報告をしてくれたことが、私たちの登頂には大きな助けになりました。

――ところで、ゲルリンデさんは8000峰14座を「無酸素で」登頂しているのですね。

 はい。今までの登山で、酸素を使って登ったことはありません。私の登山のポリシーとして、無酸素で登ること、荷物を持ってくれるシェルパに頼らない、ということがあります。自分の持っている力だけを使って登りたい、と思っているのです。

――私たちがイメージする高所登山では、大きな酸素ボンベを背負って歩く姿が一般的なように思いますが、無酸素と有酸素では何が違うのでしょうか?

 得られる酸素の量が大きく違います。酸素を使って8000m地点にいるのは、無酸素で6000m地点にいるのと同じと考えてよいと思います。一般的に、5000mの地点では酸素の量が平地の1/2、8000m地点では1/3になります。8000m地点の酸素量では,人間は生命を維持するのが非常に難しいと言われています。

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