第1回 登れば登るほど山に魅了されて

 いいえ、そのときの私はとても幸せでした。8000mを超えるピークのひとつに登るという大きなチャレンジをなしとげることができたのですから。初めてでも自分の体が8000m峰にうまく適応していることがわかったのも収穫でした。メインの山頂には届かなかったけど、また次に行けばいいと思ったのです。その後、ブロード・ピークの本峰には2007年に登頂しています。

――初めての8000m峰、ブロード・ピークへの挑戦を終えてどんなことを感じましたか?

 本当にすばらしい体験をして「ここが自分のいる世界だ、自分のいる場所だ」と強く思いました。とはいえ、8000mの高峰にトライするには、登山の基地となるベースキャンプへの移動も長く、登山自体にも日数がかかるために約2カ月の期間が必要です。

 私は当時、看護師として働いていましたから、その間は仕事を休まなくてはなりません。時間を作るのが難しかったですが、その後も資金をため、比較的に短期間で済むアマダブラム(ネパール・6856m)や、ムスターグ・アタ(中国・7546m)などの高峰に登り続けていました。

8000m峰の扉を開き、その世界に魅了されたゲルリンデさん。14座制覇に向けて動き出した彼女の挑戦についてうかがいましょう。

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つづく

ナショナル ジオグラフィックに登場したゲルリンデさんの記事

2012年4月号「K2 非情の山に魅せられた女性」
エベレストよりも困難と言われる世界第2の高峰、K2に挑んだゲルリンデさんたちの苦闘を描く。

リスクテイカー ゲルリンデ・カルテンブルンナー
危険を覚悟で自分の信じた道を突き進む「リスクテイカー」の一人としてミニ・インタビューを掲載。

ゲルリンデ・カルテンブルンナー

1970年、オーストリア生まれ。村の神父に連れられたことがきっかけで登山に開眼。23歳のとき、ブロード・ピークの山頂直前まで登った際に得た充実感により、高所登山への思いが募るように。看護師として働きながら時間と資金を作り登山を続けていたが、2003年にプロ登山家に転身。以来、毎年ヒマラヤ、カラコルムへの遠征を続け、2011年8月23日、K2に登頂し、女性初の8000m峰14座無酸素登頂を成し遂げた。
オフィシャルサイト http://www.gerlinde-kaltenbrunner.at/en/


西野淑子(にしの としこ)

1969年、山口県生まれ。大学卒業後、旅行ガイドブックを多く手がける出版社を経て、1999年よりフリーランスライター&編集者として独立。趣味は登山と茶道。登山は1999年からはじめ、現在は関東近郊の低山歩きから、アルパインクライミング、冬山登山など、オールラウンドに楽しみつつ、専門誌『山と溪谷』(山と溪谷社)(東京新聞出版部)などでも活躍している。主な著書に『東京近郊ゆる登山 (ブルーガイド)』(実業之日本社)、『女子のための!週末登山』(大和書房)、『もっと行きたい! 東京近郊ゆる登山 (ブルーガイド)』(実業之日本社)、『山歩きスタートブック』(技術評論社)などがある。