第3回 人は人を食べたのか、4つの事例を読み解く

 今から1800年ほど前の現生人類の遺跡からも食人を示唆する痕跡が発見されている。古代のヨーロッパ西部に住んでいたケルト人は、ドルイド教と呼ばれる宗教を信仰していた。その儀式の中に生け贄があった。ユリウス・カエサルが率いたローマ帝国の遠征隊が残した文書によれば、ドルイド(ドルイド教の司祭)は「祭壇を捕虜の血で覆い、人間の臓物を通じて神意を伺うことを聖なる義務と見ていた」という。

儀式に際してヤドリギを切るドルイド(Druids Cutting the Mistletoe on the Sixth Day of the Moon” (oil on canvas), Motte, Henri-Paul (1846-1922)/Private Collection/Photo © Peter Nahum at the Leicester Galleries, London/Bridgeman Images)
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 実際、英国アルベストンの洞窟から、西暦200年頃のローマによる征服時代のものとされる150人もの人骨が出土している。頭蓋骨が割られた跡が残る犠牲者はドルイドによる生け贄の可能性があるという。英国ブリストル大学の考古学者、マーク・ホートンは、「もしかするとこれらの遺体すべてが神に捧げた大きな犠牲だったのかもしれない。ローマ人に対する勝利を得るために」と語る。

 1世紀の古代ローマの歴史家、大プリニウスはドルイドについて語る中で、ケルト人は儀式として食人を行った、つまり敵の肉を自分の心身を強化するものとして食べたのではないかと述べている。実際にアルベストンの洞穴の骨には、まがまがしい凶事が行われた可能性を示すものがあった。遺体の大腿骨が、栄養豊かな動物の骨髄を取る時と同じように割り開かれていたのだ。

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