第5回 競争か協調か、火星を目指す世界の動き

2014年12月、NASAは新型の有人宇宙船オリオンの無人機で試験飛行に成功した。写真はデルタIVヘビーブースターで同機を打ち上げる準備をしているところ。(Lockheed Martin)
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 火星に人類を送り込もうという気運は、世界的に高まりつつある。1960年代初頭に米国と旧ソ連の間で繰り広げられた宇宙開発競争は、もはや過去の話だ。国の威信をかけて争っていた20世紀とは違い、現在は各国が連携して火星到達に必要な技術開発を進めようとしている。従来から米国は協力を積極的に進めてきたが、さらに範囲を広げて世界が連携し、火星に無人探査機を送り、最終的には人類の火星到達を目指そうと、各国で協議が進められている。

 例えば、欧州、ロシア、中国、インドが協力関係を結び、そこに米国やその他の宇宙開発に挑む国々も加わる。そのように一致団結すれば、資金面でも技術面でも人類の火星到達は現実味を帯びてくる。民間企業も宇宙に熱い視線を注いでおり、火星都市の実現をかつてないほど強力に後押ししている。その力がうまくはたらけば、ますます実現の日は近づく。

 現時点で火星を視野に入れている各国をここで紹介しよう。

中国:中国の宇宙開発局(中国国家航天局)は、2020年にも火星探査機を打ち上げる計画を進めている。すでに火星探査車の小型プロトタイプが公表され、2030年頃をめどに岩と土壌のサンプルを集めて地球に持ち帰るミッションも合わせて発表された。

欧州:欧州宇宙機関(ESA)では、「エクソマーズ」計画が進行中だ。エクソマーズ計画は2016年3月のトレース・ガス・オービターの打ち上げをもって開始された。オービターは突入・降下・着陸実験モジュール「スキアパレッリ」を載せて2016年10月に火星軌道に到達。このスキアパレッリは着陸に失敗したが、エクソマーズ計画では2020年にも最先端の探査車の打ち上げを予定している。エクソマーズの両ミッションは、欧州とロシア双方の宇宙機関が協力して進めている。

2016年3月、欧州とロシアの共同ミッションとして火星探査機エクソマーズ2016がカザフスタンから打ち上げられた。(ESA-Stephane Corvaja, 2016)
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インド:インドの火星周回探査機「マンガルヤーン」は、2014年9月に火星の周回軌道に到達した。インドが地球の外側で築いた初の拠点だ。マンガルヤーン探査機は火星の地形と大気を調査し、生命の有無を示す手がかりにもなるメタンの存在を探る。マンガルヤーンの成功を受けて、インド宇宙研究機関(ISRO)が抱く新たな惑星間飛行計画への期待に弾みがついた。NASA-ISRO火星協働グループは、インドと米国の協力関係の構築を進めている。

日本:宇宙航空研究開発機構(JAXA)は現在、火星の2つの衛星、フォボスとダイモスのいずれかを対象とした探査ミッションを検討している。2020年代初頭の着陸を目指し、サンプルを地球に持ち帰って分析する計画だ。

アラブ首長国連邦(UAE):イスラム世界が宇宙探査に乗り出す最初の一歩として、UAEは火星の現在の天気と過去の気候の関連を調査する火星周回探査機の構想を発表した。2021年の火星到達が予定されており、火星の大気が昼夜や季節を通してどのように変化するかという全体像を描くことに初めて挑戦する。

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