第3回 火星探査車の着陸地点を選ぶということ

「火星って何が難しいかって、空気が中途半端にあるんですよ。大気があるおかげで、到着時に燃料を使わずにある程度減速できるんですけど、地球みたいにパラシュートだけで降りることはできない。パラシュートも使うけど、耐熱のためのエアロシェルや、逆噴射用のロケットまで積まなきゃならない。おまけに、このやり方では、火星の標高で1000メートル以上の場所には着陸できないんです。空気が薄すぎて、パラシュートで十分に減速する前に地面に激突してしまうからです」

2015年8月5日に着陸したキュリオシティのイメージ映像。ラストシーンは感動モノ!(説明は英語です)(Video:NASA/JPL-Caltech)

 そして同じく火星の事情として、地球とは全く違ったプレート(岩石型惑星の表面を覆う岩盤)の構造があるという。地球の場合、海洋プレートと大陸プレートあわせて、大きなものでも10以上ある。一方、火星は、基本的には、北半球プレートと南半球プレートの2枚だけだそうだ。

「北と南で、まったく違うんです。北がかつての海の底で、南が山の上。だから、ランダー(着陸機)やローバーが着陸成功した場所って、北半球が多いですよね」

 小野さんが地図を指差した火星の南半球側の地図には、たしかに「墜落」やら「着陸後に通信途絶」といった文字がたくさん書き込まれていた。マルス2号、3号(1971年、ロシア。2号は墜落、3号は通信途絶)から、ディープ・スペース2号、マーズ・ポーラー・ランダー(1999年、アメリカ、ともに墜落)など、南半球には悪魔が住んでいるかのごとき困難さを示している。もちろん、成功したバイキング1号、2号も、オポチュニティもキュリオシティも北半球に降りている。

1999年12月3日に墜落したマーズ・ポーラー・ランダーの想像図。火星の南極域を調査する計画だった。 (Image:NASA/JPL/Corby Waste)
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