小野雅裕さんが技術研究者として所属するNASA、ジェット推進研究所(JPL)は、カリフォルニア州ロサンゼルスの郊外の都市パサデナに本拠を構える。無人宇宙探査機を使った科学探査の名門で、太陽系探査の聖地と言っても過言ではない。
1976年に火星に着陸したバイキング1号と2号、1979年に相次いで木星に到達したボイジャー1号と2号は、20世紀生まれの少なからぬ人々にとって宇宙に目を開く原体験にもなっている。特にボイジャーは、最初の目標天体である木星以降、土星(1号と2号)、天王星と海王星(2号)を歴訪し、長期に渡って科学探査を行ってきたため、サイエンスとしての成功と同時に、多くの人々の心の琴線に触れた。
そして、1990年代以降、バイキングの成功から20年近く行っていなかった火星探査に再び力点を移していった。飛行途中での通信途絶など失敗も多かったものの、執拗なまでに火星を目指し、近年は著しい成功をみている。現在、火星では、JPLが開発した2つの火星ローバー(車輪がついて自走できる探査車)、オポチュニティ(2004年から運用)、キュリオシティ(2012年から運用)が活躍中だ。
そんな中、小野さんは、どんな仕事をしているのだろうか。このきらびやかな惑星探査の歴史の中で、小野さんがかかわっているものとは?
「まず、うちらの仕事って、プロジェクトベースなので、ただ1個の仕事をするわけじゃなくて、いくつもの仕事を掛け持ちでするんです。僕の場合は時間の75%が『マーズ2020』といって、次の火星探査のミッションをやってます。残りの25%は、もっと先を見越した研究をいろいろですね。ぼくの専門が人工知能なので、どうやってスペースクラフト、宇宙機をもっと賢くするかですとか。もう終わってしまった研究では、彗星ヒッチハイカーの実現可能性についての研究。今やっているものとしては、土星の衛星で氷の下に液体の海があると考えられているエンケラドゥスでどうやって10キロもの厚さの氷の下に到達するか、ですとか」
次世代火星ローバー、彗星ヒッチハイカー、エンケラドゥスの氷の下への旅……詳細は分からない現時点でも、それぞれ、イメージを喚起する力があり、頭がくらくらするほどだった。
なにはともあれ、小野さんが今、一番多くの時間を割いている「マーズ2020」の話から。
人類の火星への旅は、もはや夢物語ではない――。ナショジオがお届けする火星の最新情報を、こちらでどうぞ!
マーズ 火星移住計画 特設サイトへ