第3回 医療大麻で救われる人々と、私も服用してみました!

「カンナビス(大麻の学名)による治療は、完全にカスタムメイドの世界。同じ症状でも、適切なカンナビスの種類や服用量、CBDとTHCの割合などは個人によって異なります。自分に合うものを見つけるまでに少々時間がかかるかもしれませんね」

 今後私は、同じCBDオイルを3週間単位で25mgずつ増量して服用する。そして、これでも症状が緩和しない場合は、やはり3週間単位で、CBDオイルに含まれるTHCの割合を変更する予定である。さて、いかがあいなりますか?

FDAのCBD関連製品検査結果リスト。(FDAのHPより)
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 ところで、マリファナの使用を厳しく制限している日本でも、THCを含まない一部のCBDオイルは購入可能だ。医薬品ではなく、健康食品や民間療法の薬草と同じ用途の「ハーブ」と位置づけられているからだ。ただし、粗悪品も存在するので要注意である。たとえば、アメリカでは食品医薬品局(FDA)が各社の製品を検査。結果を公表したが、CBDオイルと謳いつつCBD含有率1%未満の製品が多く、皆無のものまであった。

 日本の〈医療用マリファナ〉は、アメリカに較べ25年遅れているといわれる。それでも2015年、国内における臨床試験の実施を目的に、「日本臨床カンナビノイド学会」が昭和大学薬学部薬物動態学教室内に創設された。同学会理事長の新垣実医師もまた、CBDオイルを含めたマリファナの働きを確信しているひとりだ。

 新垣医師が語る。

「3年前、私の老いた母は間質性肺炎に罹り絶望的な状態に陥りました。そこで私は、母の舌下にCBDオイルを垂らしてみたのです。すると肺の炎症が治まり、母は意識を取り戻しました。日本には、1948年に『大麻取締法』が制定されるまでの長い間、カンナビスを、喘息や鎮痛の薬として使用した歴史があります。『大麻取締法』は、戦後、アメリカ占領軍の強い意向を受けて立法化されました。そのアメリカが今、カンナビスの医療的役割を急速に見直している。日本政府は、患者の“医を知る権利”のために、せめて研究くらいは許可するべきではないでしょうか」

 一方、〈医療用マリファナ〉に加えて、今月8日の住民投票で嗜好用マリファナが認められたカリフォルニア州では、これまで見向きもされなかった畑を、マリファナ栽培を目的に買い上げる業者が急増。早くも、農地のバブル化現象が起きているという。

〈医療用マリファナ〉が今後、日米やその他の国でどのような展開をしていくのか。自らのアレルギー症状とCBDオイルの関連性を検証しながら、世界の〈医療用マリファナ〉の行く末を注意深く見守りたいと思う。

おわり

「ナショナル ジオグラフィック 生き物の不思議な力」
ナショナル ジオグラフィック日本版2015年6月号で大反響のあった特集「マリファナの科学」をはじめ、驚きに満ちた生命の世界を存分に味わうことができる1冊。
定価:本体1,200円+税
サイズ:A4判(297×205mm)
132ページ、ソフトカバー

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柳田由紀子(やなぎだ ゆきこ)

1963年、東京生まれ。ジャーナリスト、ライター。早稲田大学を卒業後、新潮社に入社。’98年スタンフォード大学他でジャーナリズムを学び、2001年に渡米。カリフォルニア州ロサンゼルス郊外に暮らす。『二世兵士 激戦の記録:日系アメリカ人の第二次大戦』(新潮新書)、『太平洋を渡った日本建築』(NTT出版ライブラリーレゾナント)、『アメリカン・スーパー・ダイエット―「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実』(文藝春秋)などの著書、『ゼン・オブ・スティーブ・ジョブズ』(集英社インターナショナル)、『木槿の咲く庭ースンヒィとテヨルの物語』(新潮社)などの訳書がある。2016年11月現在『新潟日報』で「スティーブ・ジョブズが愛した禅僧―乙川弘文」を連載中。
公式サイト:http://www.yukikoyanagida.com/