「医療界がマリファナ――この言葉は歴史的にあまりにも印象が悪いので、私は学名のカンナビスと呼びますが――を避ける理由に、知識の欠如、偏見、新分野研究に対する意欲のなさが挙げられます。カンナビスから遠ざかっていれば、とりあえず安泰という考え方です」

 こう語るのは、〈医療用マリファナ〉に特化した診療所、「カンナ・センター」(カリフォルニア州ロサンゼルス)の所長、ボニ・ゴールドスタイン医師だ。同医師は、ニュージャージー医科歯科大学大学院を卒業後、ロサンゼルス小児病院や南カリフォルニア大学病院小児科勤務を経て、2011年に「カンナ・センター」を創設した。

「カンナ・センター」の所長、ボニ・ゴールドスタイン医師。
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「8年ほど前、ある患者から、カンナビスの医療効果を問われたのを契機に科学的文献を検証しました。すると、驚くべき薬効があることがわかった。衝撃的でした。患者の質問に答えることを繰り返すうちに、評判を聞いた患者が次々と訪れて、次第にセンターに結実していったのです。今回の住民投票の結果には賛成ですね。偽装〈医療用マリファナ〉がまかり通っていますから。医と嗜好は、明確に分けて考えるべきです。今のようにグレーな状況が続いたのでは、カンナビスを本当に必要とする患者が誤解されてしまいます」

 ゴールドスタイン医師は、毅然とした態度で述べた。

 ですが先生、マリファナは本当に安全なんでしょうか? 日本では厚生労働省が、「身体や精神に悪影響があり、依存症を引き起こす恐れ」のある有害薬物と啓蒙していますが。

「2002年に発表された英国薬物乱用諮問委員会の報告書には、『カンナビスの長期使用と精神病に明確な因果関係はない』と明記されています。また依存に関しても、全米科学アカデミー医学研究所が、『カンナビス使用者の10%が依存症状を示す』と報告しています。これに較べて、アルコールは15%、コカインは17%、タバコにいたっては32%。要するに、タバコやお酒よりカンナビスの方が依存度は低いのです。

 カンナビスは、たとえ過剰摂取しても極めて有害、致命的ということもありません。怒りや暴力を誘発するというのは長年培われたイメージで、実際には逆に、大多数の人が緊張がほどけ寛いだ精神状態になります。ただし、脳の発達期である18歳未満の青少年は、重症を患っていない限り服用すべきではないし、妊婦も控えることが推奨されます。もちろん、カンナビスが精神に影響を及ぼしている状態で運転しては絶対にいけません。なお、ごく稀に、精神障害者が服用すると異常反応をすることがあります」

 では、そもそもマリファナはどんな成分を含み、どんな形で身体に働きかける植物なのだろうか?

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