第1回 実は病人が入手しづらい〈医療大麻〉のカラクリ

 それで、主治医を訪ねると、「マリファナなんてとんでもない!」と、予想に反して言下に否定。さっさと席を立たれてしまった。続いて訪問したリハビリ医師の反応も同様で、取りつく島もないのだった。カリフォルニアは、〈医療用マリファナ〉がオーケーのはずなのだが……。

 頭が混乱した私が次に訪ねたのは、2年前に肺癌を患った知人だった。彼は、術後の化学療法で吐き気と食欲減退に襲われ、3週間で20キロ強も減量。その時、医師からマリファナを処方されたと聞いていた。

マリファナの合成成分を含むFDA承認薬の「マリノール」。
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「正確にいうと、マリファナではなく『マリノール』という薬だったんですよ」

 今はほぼ元の体重に戻った彼は、そう言って茶色い錠剤を見せた。看護師から、「マリファナには、化学療法の副作用を和らげる効果がある」と教えられ、主治医に相談したが取り合ってもらえず、代わりにマリノールを処方されたという。「マリノール」は、1985年に米食品医薬品局(FDA)が許可したマリファナの合成成分を含む薬品だ(日本では未承認)。

 アメリカには、大別すると「連邦法」と「州法」、2つの法律がある。「連邦法」は連邦政府が定める全米に通じる法律で、「州法」はそれとは別に各州が独自に作る法律だ。実はマリファナ、「連邦法」の規制物質法(麻薬取締局管轄)で、「もっとも乱用性が高く、医療用途がなく、安全性に欠如した物質」を示す「スケジュールI」に分類されているのだ。よって、「連邦法」にしたがえば、医者がマリファナを患者に処方することも、患者が服用することもできない。

 一方、カリフォルニア州には「医療用マリファナ法」があり、医療目的のマリファナを認可している。2つの法は明らかに矛盾する。それ故、州内でマリファナを使用したにもかかわらず、連邦機関により医師や患者が逮捕されるという事態が起きうるのである。

 私や知人の主治医が、マリファナを拒否した理由はここにあったのだ。

 ところが――。

 ある日、親友の家でこれらの体験を話していたら、突然、彼女が1枚の書類を目の前に差し出した。

次ページ:「カラクリを教えてあげようか」と親友は言った。