船は、プリンセス・ロイヤル島の北側を回り込むようにして、大陸側の入り江に入っていく。
この辺りは、再び沿岸温泉が湧き出ている海域で、ビショップ・ベイ(Bishop bay HS)温泉、ウイーワニー(Weewanie HS)温泉と続けて立ち寄り、心と体を癒した。
海岸の湯船から海を眺めていると、背中のヒレを突き上げて泳ぐシャチの群れが、ゆっくりと通り過ぎていった。
アザラシの頭が、ひょっこりと水面に出たかと思えば、高い所から白頭鷲(ハクトウワシ)が飛んできて、水面ぎりぎりで、身をひるがえす。
そんな光景の中で、私はバケツに湯を汲んで、久しぶりにルカを洗うことにした。
ルカの体からは、まるで雑巾汁のような灰色の水が流れた。
数日、この海域を周った後、沿岸インディアン、ギッガ族の村であるハートリー・ベイに寄った。
この村は、環境保全の意識が高い村で、村内の道路が全て地面から嵩上げしたウッドウオーク(木造道路)になっている。
このウッドウオークの負担にならないように、村人たちは普通の車ではなく、ゴルフ場のカートのような軽車両を使っていた。
村の消防車もまた小さくコンパクトな形で、まるで子供のおもちゃのようである。
ここで村の小学校を見学し、子供たちと触れ合い、その後、ルカを連れてウッドウオークがどこまで続いているのかと端まで歩いて行くと、その奥は、鮭の稚魚の養殖所となっていた。
作業員に声をかけて、許可をもらって水槽を覗き込むと、指の長さほどの小さな稚魚が泳いでいた。
作業員の一人が、ここはコーホーの養殖所だと教えてくれた。コーホーとは、シルバーサーモン(銀鮭)のことである。