Episode9 スピリット・ベア島の不都合な真実

 期待むなしく、熊は現れなかった。
 次の日も、熊の姿を探しながら、沿岸を舐めるように航行し、隣のサーフ・インレットに船を進めていく。
 このインレットもまた、プリンセス・ロイヤル島の深部まで入り込んでいる。
 けれど奥地は、この周辺の森で最も激しく伐採が進んでいる場所で、グーグルアースが提供する衛星写真を見てみると、胸が痛み、涙が出そうになるほど、ハゲ山状態なのである。
 実は、カナダ西海岸というのは、広大な伐採地区となっていて、かなりの木々が切り出されている。
 夏でも雪を被っている標高の高い山々と、氷河が削ったU字渓谷に囲まれた美しい景観を見せている沿岸地域ではあるけれど、ふと目をやると、視界の中に、必ずどこか、伐採されて地面が露出している斜面が目に入る。
 今まさに、スピリット・ベアの生態は、島の木々の伐採によって危ぶまれているのである。
 私は、この状況を確認したかった。

 さて、西側沿岸部のスピリット・ベアたちは、激しく伐採が進む森の中で、生き延びているのだろうか?

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フィヨルドの海の恵み

船旅では、海から食料を頂くのも楽しみの一つ。その恵みを、毎回紹介いたします。

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つづく

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでは「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」(電子書籍化)「アイスブルーの瞳」を連載した。
公式サイトhttp://web-hirokawamasaki.wixsite.com/webmasaki