後でカナダの歴史を調べてみると、その理由が分かった。
 王立カナダ騎馬警察は、そもそもイギリス統治時代や西部開拓時代に、馬に乗って人々の治安維持にあたっていたことから始まる。
 連邦警察でありながら、騎馬という名を残し、今でも伝統的な馬での巡回警護をしているのも、その歴史を残すためだ。
 この海域の島々を、州警察や市警察ではなく、王立カナダ騎馬警察が管轄しているのも、古い時代から彼らが守って来た歴史と伝統があるからである。

 私は、その騎馬警察の船に興味深々で、前のめりで船の奥の方まで目を凝らしていると、一人の若い警察官が船内から出て来て、私の顔を見るなり、こう言った。
「君たちの船をチェックさせてもらうよ」 
 そして、巡視艇を降りて、私たちの船に乗り込んでいった。
 実は、北米の海域は、今でも船による麻薬の取引が盛んに行われている。
そのため、時々、コーストガードが船を止めに来て、乗組員の素性と船内をチェックすることがある。
 だから私はてっきり、この警官も、私たちのことを調べに来たのだと思い、私は船内に戻って、身分証明書となるパスポートなどを出す準備をしていると、彼は、「その必要はないよ」と言った。
 彼の目的は、この船に積んでいる消火器や発炎筒の使用期限、一酸化炭素警告機の有無などの、船の安全チェックだったのだ。

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 カナダは、一般の小型船舶に関する安全基準がとても厳しく、船に常備しなければならないものが、厳格に定められてある。
 その上、港内の汚染原因となるものを厳しく取り締まっているので、(これはアメリカもだが)北米海域を航行する船は必ず、ホールディングタンクという、いわゆる糞尿を垂れ流しにせず、一旦、貯めておいて沖で流すためのタンクが付いているかを確認される。
 実は、日本にはこの規定が無いため、太平洋横断といった冒険をする日本のヨットマンたちは、大抵、北米に辿り着いた際に、この問題に直面することになる。
「糞尿を貯めるタンクが付いていない船は、入港禁止!」となるのだ。 
 垂れ流しが発覚した場合、罰金ということもあるという。
 それらのチェックを済ませると、その若い海のマウンティー(騎馬警官)は、ルカの頭を撫でて、船を降りていった。

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