Episode7 懐かしい味のオンパレード、ベラベラ村

 ベラベラの人たちは、この海苔を、保存食ではなく新鮮なうちに食べる料理法として、鮭の卵(イクラ)と共に、さっと火を通して、サラダのようにするのだと教えてくれた。
 ちょうど施設の台所で、鍋いっぱいに作っていたので、私に少し分けてくれた。
 味付けは、海の塩気が残っているだけで、他には何も加えていない。
 日本で食べる海苔とは違い、食感が固く、どちらかと言えば、細かなワカメのようでもあった。
 日本人には、白いご飯に乗せたくなるような味だが、彼らには、お米の文化がないために、そのまま食べる。

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「これも食べてみて」
 と、アリスさんが次に持って来てくれたのは、小さな針葉樹にびっしりと黄色いなにかが付いたものだった。
 日本の食文化にはないが、実はこれも私には見覚えがあって、ベーリング海を目の前にしたコツビューというエスキモーの村で、似たものを食べているのである。
 コツビューは、鯨の回遊から沿岸が遠いため、捕鯨ができず、主にアザラシを主食としている人たちの村である。
 その村でもまた、
「沿岸インディアンの友人が、毎年送ってくれるのよ」と、私に食べさせてくれたのだった。
 それは、スプルースの枝葉を海中に沈めて、ニシンが卵を産み付けたものである。
 まるで、木の枝に小さく咲く花のように卵が付いている。
 彼らは、これをスプルースの枝葉が付いたまま茹でて、味付けをしないで、スプルースの香りを楽しみながら食べていた。

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 アリスさんが、「これも食べてみて」と出してきた、その黄色いものというのは、スプルースの木に付着したニシンの卵を、そのまま乾燥させたものだったのだ。
 これもまた、長い冬を越す間に食べる、おやつなのだという。
 ほどよく塩気があって、海の香りのする煎餅でも食べているような食感だった。

 そして、彼らが見せてくれたものの中で、私が一番に驚いたのは、丸い瓶に入れられた、白く凝固した脂のかたまりだった。 
 見た感じでは、今流行りの、瓶詰めのココナッツオイルのようなものである。
 「これはね、ウーリガン・グリースと言うのよ。私たちの食卓に無くてはならない、大切な、私たちの食文化よ」と、世話役の女性が言った。
 ちょうど、部屋のテレビが、ウーリガン・グリースの作り方をドキュメンタリーにしたビデオを流していた。
 しばらくそれを見ていると、このウーリガン・グリースを作るのに、とても手間がかかることが分かった。