Episode7 懐かしい味のオンパレード、ベラベラ村

 その後、ベラベラという村に寄った。
 ベラベラというのは、白人たちの呼び名で、村の本当の呼び名は、「ヘルシク(Heiltsuk)」という。
 伝統を守りながら暮らしている住民が多く、村を散策すると、古いトーテムポールがいくつも残されていた。

 私は、セーラー犬のルカと一緒に村を歩いていると、古いトーテムポールが玄関先に立つ、集会場のような建物を見つけた。
 入り口から覗いていると、「中へ、いらっしゃい」と、奥から声を掛けられた。
 犬も一緒に入っていいと言うので、奥の方まで歩いて行くと、広い部屋の中で車椅子のお年寄りたちが談笑をしていた。
 そこは、村の長老たちを労る施設だった。
 お年寄りたちの世話役だというアリスさんが、この村の歴代のチーフ(族長)の肖像画を見せてくれた。
 その中の一人は、アリスさんのお爺さんだという。

[画像のクリックで拡大表示]

 なんとなく似ている気がした。
 この肖像画は、先に立ち寄ったシェアウオーターの大きなストアーの壁に、大きく描かれている最中で、私たちが滞在したときに、クレーンに乗った絵描きが色を塗っていたのはこの絵だったのだ。

[画像のクリックで拡大表示]

 アリスさんや、この施設の人たちが、彼らの伝統的な食べ物も紹介してくれた。
「これは、何か分かる?」
 もう一人の世話役の女性が、黒い乾物を手に見せてくれた。
 それには、見覚えがあった。岩海苔を乾燥させたようなものである。
「これは、日本の食文化にもありますよ」
 私たちは、それをお味噌汁に入れたり、煮物に使ったりすると説明すると、彼らはこれを、おやつのように食べるのだと言う。

 そう言えば、私は北極海を目の前にした北米最北端の捕鯨をするエスキモーの村、バローに滞在したときに、そこで仲良くなったイヌピアット族の友人と、この海苔の乾物を食べた経験をしている。
「沿岸インディアンの友達が、毎年送ってくれるのよ」
 と言って、そのエスキモーの友人たちは、お菓子のようにつまんで、パリポリと食べていたのを思い出した。

[画像のクリックで拡大表示]

 アラスカの歴史は、エスキモーとインディアン、または部族同士のいがみ合いの歴史と言っていい。
 自然環境が厳しく、長く続く冬の食料のために、食料豊かな土地を巡っての争いが多くあった。
「森の中で、エスキモーを見かけたら、必ず殺せ」
「ツンドラの大地に、インディアンを見かけたら、必ず殺せ」
 これが、彼らの部族や村を守るために、代々言い伝えられた言葉である。
 しかしながら、今では、エスキモーとインディアンとの交流も進み、殺し合ってきた長い歴史を持ちながらも、そのことをいつまでも憎んでもいない。
 この村の女性が見せてくれたそのパリパリおやつ海苔を見ながら、私は、エスキモーの友人たちの笑顔を思い出したのだった。