Episode6 冒険家マッケンジーの謎の終着点
時々、ルカをカヤックに乗せて、朝夕のひと漕ぎを楽しむことがあったので、ルカは、当然自分も一緒に行くものと思い、尻尾を振って私のところへとやってきた。
しかしながら、私は少し躊躇した。
ルカはオスなので、上陸後にマッケンジーの碑に片足を上げてマーキングしてしまうかもしれないからである。
それは、あまりにも失礼。
とは言うものの、ルカと私は、今では一心同体。冒険の相棒でもある。
ルカを乗せてカヤックで近づいていくと、ちょうど干潮時ということもあり、マッケンジー碑の立つ岩には、びっしりとカラス貝がついていた。
水位が下がっているせいで、カヤックから見上げると、その岩は聳え立つように高く見えた。
足場となりそうな所を探すが、どこにも無い。
岩を回り、横の海岸にカヤックを寄せて上陸し、比較的なだらかになっている岩肌をよじ登ってみた。
この岩には、マッケンジーが自ら岩に刻んだという、「Alex Mackenzie from Canada by land 22d July 1793」という文字が残っているというが、岩の上部は、野ばらが生い茂っていて、その茂みに隠れてしまっているのか、私には発見することができなかった。
しかしながら、ますます謎が深まる。
本当に、なぜ、こんな所で止めてしまったのか?
これが私の冒険だったら、後味が悪いというか、切れ味が悪いというか、なんだかスッキリしないだろう。
ガイドブックには、マッケンジーが探検をやめてしまった理由が、少しだけ触れられてあった。
そこには、ガイドとして雇った現地インディアンたちとの間に、揉め事があったからだと書かれてあった。
とはいえ、もうちょっと行けば、太平洋の水平線を眺めることができるし、しかも、ここまで来たら、もうガイドなど必要がない。
それなのに、どうして?