この宿泊施設で、ダイバーだけではなく、船乗りやカヤッカーたちのサポートもしてきたアーニーだから、そういったこともよく知っていて、彼女の手作りエナジー・バーは特別大きかった。
 しかもその形は、バー(棒の形)ではなく、丸く握った山下清画伯の握りめしというか、砲丸投げの玉のようなもので、特に彼女のレシピではチョコレートで固めているので、私には泥団子にも見えた。
 その真ん丸なエナジー・バーに、私はふふふと笑みをこぼすと、アーニーさんもまた、「ふふふ、なぜ、あなたの笑みが零れるのか、分かるわよ。この形でしょ?」と一緒に笑った。

 アーニーさんといろんな話をしていると、この後、どこに行くのかと聞かれ、それはまだ決めていないと答えた。
 とりあえず、この先の荒れ狂うクィーンシャーロット海峡を乗り切るのが目標であるから、それしか頭にない。
 すると彼女は、少し興奮気味に言った。
「ハカイに行くといいわ。ハカイに行きなさい」
「破壊???」
 私は日本人であるから、真っ先にその漢字が頭に浮かんだ。
「そこは、本当は一般人が行くところじゃないんだけどね……でも、行ったほうがいいわ」
 彼女は推し勧める。

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「でも、一般人が行くところじゃないんでしょう?」
「そうね、海洋学者たちの研究島のような場所だから、一般には公開してないけど、でも、行ってもいいのよ。入島禁止ではないわ」
 そんな会話を交わしながらも、私はどうしても「破壊」という言葉が頭から離れず、その場所が、まるでマッド・サイエンティスト(世界征服を企むような狂った科学者)たちの秘密の怪しい研究島のような気がしてならなかった。
 しかしながら、そこに行っても逮捕されるわけでもなさそうなので、次の目的地は、その破壊島……、いや、ハカイ島に行こう。
 いったいこの人里離れた海域で、海洋学者たちは、何を研究しているのだろうか?
 まさか…、海洋生物兵器でも??? 

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