第4回 セイボリースパイスで“うま味”と“健康”を

 いわゆる「料理のコク」を出すのに欠かせないのが、ピリッと辛く食欲をそそるスパイスだ。「セイボリースパイス」とも呼ばれる。古代から、エジプト、ペルシャ、アラブ、ギリシャ、ローマ、中国、インドなどの地でセイボリースパイスは人気が高く、料理のみならず、治療薬や防腐剤として、時には香料や染料としても使われた。

インドのケララ州チェンガナでは、毎年恒例の祭りの期間中、ヒンドゥーの女神アンマンを祀る寺院でターメリックを浴びる儀式が執り行われる。この地域でターメリックは、体を清めるためにも使われる。(写真:AJP/Shutterstock.com)
[画像のクリックで拡大表示]

 セイボリースパイスの中には、消化器や呼吸器の疾患治療、あるいは傷を治したり、痛みを緩和したりするのに古くから用いられてきたものもある。たとえば、キャラウェイは、腹の張りや消化不良を治すのに使われた。ターメリックは、炎症を抑える作用や抗菌作用で知られた。スマックは解熱に用いられ、パプリカは心臓や循環器の健康によいとされた。カイエンヌはカプサイシンを含むので、関節の腫れや筋肉痛を和らげるのに使われてきた。

インド料理やメキシコ料理に欠かせないクミン。コショウに似た風味を加える。(写真:Dionisvera/Shutterstock.com)
[画像のクリックで拡大表示]

 ここでは、セイボリースパイスの一つとして、クミンを紹介しよう。ブラックペッパーに次いで世界で広く使われているスパイスだ。原産地は地中海沿岸。5000年以上前、古代エジプトで栽培が始まり、香味料やミイラの防腐剤として使われていた。昔のギリシャでは、現在の塩とコショウのように、食卓にクミンが置かれていた(今も、モロッコではよく見かける風景だ)。

 木の実を思わせ、コショウに似た刺激があり、ほろ苦い――クミンの強い風味は、世界中で人気がある。特にインド料理では、カレー粉、コルマ(スパイスで味つけした肉や野菜を炒め、ヨーグルトやスープで煮込んだもの)、マサラ(粉末の香辛料を混ぜ合わせたもの)、スープなどに欠かせないスパイスだ。ネパールや中国西部、北アフリカ、中東地域、ブラジル、メキシコでも、何百年にもわたり使われてきた。クミンは、グリル料理のラブ(食材に揉み込む調味料)、煮込み料理、卵料理、野菜、チーズ、パンなどの風味づけにも用いられる。

クミンで風味づけしたほんのり甘いコーンブレッドマフィン。チリコンカーンとの相性は抜群だ。(写真:minadezhda/Shutterstock.com)
[画像のクリックで拡大表示]

 栄養面では、ビタミンC、Eや、ヘモグロビンの合成を促して血液の流れを良くする鉄を豊富に含み、貧血症、注意力や認知に関する障害を改善すると期待されている。

 ハーブ療法家は、消化不良、皮膚発疹、免疫機能の改善、痔疾の治療にクミンを使う。食物繊維を多く含み、抗真菌性、抗微生物性にも優れているため、天然の便秘薬としての作用も期待できる。

クミンは茎の細いパセリの仲間で、白やピンクの小花を傘形につける。(写真:Tukaram Karve/Shutterstock.com)
[画像のクリックで拡大表示]

 クミンは抗酸化作用が高く、健康増進に役立つことから、がん治療に有効であることも証明されるかもしれない。ある研究では、クミンは化学予防性があり、解毒作用や抗発がん作用がある酵素の分泌を促進することがわかっている。また、糖尿病の治療でも期待されている。初期の研究だが、クミンには低血糖の進行を抑える可能性があるという結果が出ている。

 ちなみに、かつてヨーロッパでは、クミンは貞節の象徴で、ニワトリや恋人が離れていかないようにする力があるとされた。結婚式にクミンシードを忍ばせておくと、その夫婦は必ず幸せになると信じられた。

クミンのレシピ:伝統的なガラムマサラ

 ガラムマサラは「熱い」「スパイスを混ぜたもの」という意味のヒンディー語に由来する。調理法はさまざまだが、いつも挽きたてを使うようにすると、風味が際立つ。高品質のものなら、粉末の商品でも挽きたてに近い風味がある。材料のスパイスすべてをよく混ぜ合わせ、密閉容器に入れよう。涼しく、乾燥した場所に保管する。

インド北部と南アジアでは、カレーやビリヤニ、鶏やラム、魚の料理、ライスピラフや焼きものにガラムマサラが欠かせない。(写真:Ben Renard-wiart/Dreamstime.com)
[画像のクリックで拡大表示]

【材料】クミンパウダー・・・大さじ1、コリアンダーパウダー・・・小さじ1と1/2、カルダモンパウダー・・・小さじ1と1/2、ブラックペッパー(パウダー)・・・小さじ1と1/2、シナモンパウダー・・・小さじ1、クローブパウダー・・・小さじ1/2、ナツメグパウダー・・・小さじ1/2

※本連載は書籍『ハーブ&スパイス大事典』の一部を抜粋、再構成したものです


『ハーブ&スパイス大事典』

ハーブ、スパイス、シーズニングがもつ“自然の恵み”を用いて、「生活のクオリティ」を高めましょう。

 ナンシー・J・ハジェスキー 著
 日本メディカルハーブ協会 監修
 247mm×193mm、320ページ
 定価:本体4,000円+税

ナショジオストア アマゾン