――麻薬カルテルが地下に潜行し、対立抗争が止まないミチョアカン州。一般の市民生活はどんな状況なのでしょう。

 今回の取材で、僕が一番大きなポイントとしていたのはそこです。映画や集めた情報から、一般市民はもうこんなところに住みたくない、逃げ出したいと思っているのではないかと予想していました。

 しかし、現地で話を聞くと、そうでもないんです。むしろ、市民の多くはどうでもいいと思っている。カルテル間の抗争は別世界の話で、日常で気をつけていることといえば、銃撃戦の流れ弾に当たらないようにするくらい。「高級車が来たら、家の奥に引っ込む」という発言が印象的でした。高級車を見たらカルテルの人間だと思え、銃撃戦が始まるかもしれないから隠れろということです。

――メキシコの麻薬戦争では、一般市民を巻き込んだ殺人事件も多いと聞きますが。

 それも、どこまでが「一般市民」なのかですよね。推測ですが、カルテルに殺された「一般市民」は、何らかのかたちで麻薬にかかわっていた人だと僕は思います。

 ミチョアカン州では、自警団ができてから、殺人事件の件数は多少減ったそうです。しかし、現地ジャーナリストは、行方不明者はむしろ増えているのではないかと言っています。警察がその数を公表していないので、はっきりはしないのですが。

本誌2016年6月号の特集「メキシコ 悪夢から抜け出す街」は、激烈な麻薬戦争から治安回復を図ったメキシコ北部の街、シウダー・フアレスの物語。Webでの紹介記事はこちら

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