第2回 自警団を隠れ蓑にする麻薬カルテル

 カルテルに拉致され、拷問された時の写真を持つ元自警団の男性。この時の犯人は彼の同僚のアパツィンガン市の職員だった。つまり、同僚は麻薬カルテルだったのだ。さらに拉致に絡んだメンバーのひとりが市長で、2014年に事件が明るみになった時に大きく報じられた
カルテルに拉致され、拷問された時の写真を持つ元自警団の男性。この時の犯人は彼の同僚のアパツィンガン市の職員だった。つまり、同僚は麻薬カルテルだったのだ。さらに拉致に絡んだメンバーのひとりが市長で、2014年に事件が明るみになった時に大きく報じられた
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 僕を余計に混乱させたのは、番組にも出た自警団のメンバーですが、その人たちは自警団としてカルテルと戦ったことがないんですよ。自警団とカルテルの戦いが一段落したあとになって「われわれは自警団」だと武器を持って現れた集団なんです。つまり、自称自警団です。そのリーダーは、僕がメキシコを発った3日後、何者かに殺されました。事件後の報道によれば、彼はカルテルの現役メンバーでした。

 そんなふうに、自警団のタイプもいろいろあって、警察が認めている自警団もあれば、自称自警団もあり、農園単位の自警団もある。この農園単位の自警団も、純然と農園を守ろうとしている集団と、麻薬生産がからんでいて、農園主がその生産現場を守るために組織した自警団もあるんです。現地の人は口々に「今の自警団はかつての自警団ではない」と言います。

――結局、麻薬カルテルの勢力争いは、沈静化していないわけですね。

 ミチョアカン州の場合はそうです。カリスマ的リーダーの不在で、自警団の要石がとれたために、カルテルがそれぞれに自分たちのやりやすいかたちで組織をつくり、地下に潜行して麻薬ビジネスを続けているという印象でした。

 帰国後、一緒に行ったディレクターと取材をふり返ったのですが、彼は開口一番「全部悪人だったね」と言いました。僕も思ったのですが、結局のところ、自分たちの利益を守ることが、自警団を組織している人たちの正義なんですよ。群雄割拠に下剋上、領主は自分の縄張りと権益のために戦うという、日本の戦国時代に似ているなと思いました。

(つづく)

丸山ゴンザレス(まるやま ごんざれす)

1977年、宮城県生まれ。海外の危険地帯から裏社会や犯罪、国際ビジネスまで幅広い分野で活動するジャーナリスト。國學院大學大学院修了。大学院まで考古学を専攻し、日雇い派遣や測量会社を経てビジネス書出版社で編集者となり独立。編集者、作家業では丸山佑介名義。主な著書に『アジア罰当たり旅行』(彩図社)、『世界の危険に挑む99の言葉』(イースト・プレス)、『闇社会犯罪 日本人VS.外国人 悪い奴ほどグローバル』(さくら舎)、『アジア旅行最強ナビ』(辰巳出版)など。現在、発売中のDVD第二弾『クレイジージャーニー vol.2』(よしもとアール・アンド・シー)では丸山さんが東洋一のスラム街&銃密造村に潜入した回も収録!


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。