第1回 新宿歌舞伎町から始まった裏社会取材

――メキシコの麻薬戦争について、なぜ関心を持つようになったのですか?

 僕が知っている麻薬戦争の国といえばコロンビアでした。それがいつのまにかメキシコに変わりました。そもそも麻薬戦争とは、カルテルと呼ばれる麻薬密売組織の縄張り争いや、カルテルを撲滅しようとするメキシコ政府との武力紛争のこと。起こっている現象も異常で、たくさんの人が殺されているし、その殺し方も残忍で、莫大なお金も動いている。それが聞こえてきたのは、この10年くらいのことですからね。

 現在のメキシコは戦場を除けば、地上で最も危ない場所のひとつとまで言われています。麻薬をめぐっては、2006年からの6年間で累計12万人の犠牲者が出たともいわれ、明らかに特異です。

――麻薬ビジネスにも、興味はあったのですか?

 僕は長く裏社会といわれる世界を追っていますが、それを象徴するもののひとつが麻薬です。銃や殺人事件なども裏社会につきものですが、それを追うのはハードルが高い。対して、一般市民がエンドユーザーとして手を出しやすいのが麻薬と売春で、取材対象として追いやすいという面もあります。

 いわば麻薬は、裏社会と表社会の接点として、一番身近なところにあるわけです。ですから、僕の麻薬に対する興味は、たとえば誰がつくっているのかとか、どういうふうに売られているのか、誰が売っているのかといったことで、書く記事もそういうところに焦点を当てています。

本誌2016年6月号の特集「メキシコ 悪夢から抜け出す街」は、激烈な麻薬戦争から治安回復を図ったメキシコ北部の街、シウダー・フアレスの物語。Webでの紹介記事はこちら