牡羊像。1世紀 / ティリヤ・テペ出土 / 金/ アフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA / Thierry Ollivier
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――しかし、館員のほとんどはそのことを知っていたと、先に言われましたね。

 ええ、知っていました。しかし、誰ひとりとして口外する者はいませんでした。私もそうですが、館員には皆、同じ思いがあったのでしょう。

 私たちは、博物館の収蔵品を博物館の持ち物とも、アフガニスタン国家の持ち物だとも考えません。それらは世界が共有すべき財産だと思っています。その共有財産を守り、後世に引き継ぐことが博物館員の使命だと。

――では、誰一人、家族にさえあり処を明かさなかったというのは。

 その使命感、職務に対する忠誠心ゆえだと思います。
 国が内戦状態になると博物館は閉館し、私たち館員は休職に追い込まれました。食べていかなければなりませんから、皆さまざまな職に就きました。私などは、野菜の露天商をして日々をしのいでいました。

 しかし、常に希望は失いませんでした。いずれは復職できる。そのときは、博物館に残された収蔵品の保護に努めようと。困難な時期にこそ、人間は希望を持たなければ生き抜けません。

ヘラクレス立像。前150年頃 / アイ・ハヌム出土 / 青銅 / アフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA / Thierry Ollivier
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