さらにひどかったのは、タリバン政権下での受難です。バーミヤンの巨大な磨崖仏が、タリバンによって破壊されたことは、世界中に報道されましたからご存じでしょう。イスラム教が偶像崇拝を禁じているとして、タリバンは国内の歴史的に貴重な美術品を破壊したのです。国立博物館の収蔵品も、約2500点がその被害に遭いました。

――では、もしマスーディさんたち館員が、地下金庫に隠さなければ……。

 間違いなく略奪され、失われていたでしょう。

 今回特別展「黄金のアフガニスタン」でご紹介する展示物は、古代アフガニスタンの至宝で、古美術品としての価値は計り知れません。実際に、それらが2004年に地下金庫から出され、その存在が明るみになるまでは、内戦の混乱により失われたと思われていたのです。

 15年間、私たち館員は口をつぐんで秘密を守り、その存在もあり処も家族にすら明かしませんでした。

――地下金庫で眠り続けた古代の至宝。展示品がどのようなものなのかをまずうかがいましょう。

(つづく)

1世紀のものとみられる黄金の「冠」。アフガニスタン北部のティリヤ・テペ遺跡の出土品。アフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA / Thierry Ollivier
1世紀のものとみられる黄金の「冠」。アフガニスタン北部のティリヤ・テペ遺跡の出土品。アフガニスタン国立博物館蔵 ©NMA / Thierry Ollivier
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特別展 黄金のアフガニスタン
-守りぬかれたシルクロードの秘宝-

http://www.gold-afghan.jp/

■会期:2016年4月12日(火)~6月19日(日)
■開館時間:午前9時30分~午後5時(土・日・祝休日は午後6時まで、金曜日は午後8時まで)※入館は閉館の30分前まで
■休館日:月曜日 ※ただし、5月2日は開館
■会場:東京国立博物館 表慶館(上野公園) 
http://www.tnm.jp/

オマラ・ハーン・マスーディ

1948年アフガニスタンに生まれる。アフガニスタン紛争が始まった1979年よりアフガニスタン国立博物館に勤務。紛争中は、同博物館の収蔵品を秘密裏に移送し保管するなど、アフガニスタン紛争下での文化財保護に主導的な役割を果たした。2001年から2015年まで同博物館館長を務め、収蔵品の略奪や博物館建屋の破壊等、紛争中に甚大な被害を受けた同博物館の復興に尽力した。アフガニスタンの文化財保護に尽力したこれらの功績は国際的にも高く評価されており、2004年プリンス・クラウス賞(オランダ)、2013年ニューヨーク大学名誉博士号(アメリカ)、2014年「アジアのノーベル賞」と称されている第56回ラモン・マグサイサイ賞(フィリピン)を受賞。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。

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