なお、社葬は、世界でも類を見ない、日本社会のオリジナルだそうだ。それも、最近はめっきり減り、会社の創業者や社長が亡くなっても、社葬はせずにホテルで「お別れ会」をする方向に変わっているとか。

 そのような傾向が「バブル後」に顕在化したのだとして、2010年代の今、葬儀はどうなっていると山田さんは見立てるのか。

「葬儀の小規模化が激しいですし、家族化・個人化というのが極端になっています。また直葬といって、もう葬儀をやらない方法も出てきました。特に、子どものない人は、親戚とかとふだんからつき合いがあればいいですけど、それもない場合、本当に遺骨の引取り手もいません。関西は元々部分拾骨なので、すべてを放棄する人もいますが、関東はそれができない。身元は分かっていても引き取り手がない場合は市町村が無縁として処理せざるを得ないのです。また、あとは永代供養墓みたいなものが、今、急速に発達してます。送骨といって、ゆうパックで送れるんです。それで3万円とかで引き取りますみたいなお寺も、地方に出てきてます。地方のお寺は、この前『寺院消滅』という本が出たように大変なことになっているところがあって、そうしたところが営業ベースでやったりとか」

 ここまで来ると、個人化というよりも孤立化、である。

 亡くなった人も、送るべき責任を負っている人も孤立する。

 それが、2010年代の、ぼくたちの社会での葬儀をめぐる現況だ、というのである。

「死」に関するコーナーの最後を締めくくる、葬儀の現況にまつわる展示より。
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つづく

山田慎也(やまだ しんや)

1968年、千葉県生まれ。国立歴史民俗博物館准教授および総合研究大学院大学准教授を併任。社会学博士。専攻は民俗学。葬送儀礼の近代化と死生観の変容を主な研究テーマとする。1992年、慶応義塾大法学部法律学科卒業。1997年、慶応義塾大大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学後、国立民族学博物館COE研究員、国立歴史民俗博物館民俗研究部助手を経て、平成19年8月に現職となる。単著に『現代日本の死と葬儀 葬祭業の展開と死生観の変容』(東京大学出版会)、共編著に『変容する死の文化 現代東アジアの葬送と墓制』(東京大学出版会)、『冠婚葬祭の歴史』(水曜社)、『近代化のなかの誕生と死』(岩田書院)などがある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社文庫)『天空の約束』、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。近著は、知っているようで知らない声優たちの世界に光をあてたリアルな青春お仕事小説『声のお仕事』(文藝春秋)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』(ちくまプリマー新書)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。

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