日本三大夜景の一つ、稲佐山(長崎市)
長崎市郊外にある稲佐山は、日本三大夜景の一つとして知られる。日本三大夜景は、ほかに「北海道・函館山」「神戸・摩耶山」が数えられるが、実はいつ誰がどのような理由で決めたのかはっきりしない。いずれのスポットも国内でトップクラスの美しい夜景が見渡せるのはもちろんだが、3カ所に共通しているのは、港町の高台から夜景を眺められる点や、ロープウェイが整備されていて、観光客がアクセスしやすい点だ。経緯がはっきりしないブランドだからこそ、神秘的で引き付けられる魅力があるのかもしれない。
私が稲佐山を初訪問したのは2013年8月。当時、同じ三大夜景の神戸・摩耶山からの夜景に感動し、夜景巡りを楽しむようになっていた。たまたま旅行で長崎へ行く機会があり、稲佐山を訪問したのだ。市内でレンタカーを借り、稲佐山の駐車場へ到着。ロープウェイで展望台に上がると、視界が徐々に広がっていく。展望台の屋上へたどり着くと、あまりの夜景の美しさに言葉を失った。
起伏に富んだ地形が立体的な光を生み出し、幻想的で光に包まれているような心地良い空間に酔いしれた。初めて訪れた場所なのになぜか懐かしさを感じ、子供の頃、親に連れられて長崎に遊びに来ていた楽しい思い出や、今までに訪問した夜景スポットでの思い出までよみがえってきた。
当時はコンパクト・デジタルカメラを使い始めたばかりで、夜景撮影をようやくマスターした頃。夢中になって夜景写真を撮っているうちに、写真を通じて夜景の美しさをより多くの人へ伝えたいと思うようになった。私にとっては、夜景写真家として原点とも言える場所なのだ。
稲佐山の山頂にある展望台からは360度の眺望が広がり、天気の良い日中は、雲仙から天草、五島列島まで一望できる。夜景が見えるのは、東の方角が中心。長崎港周辺の街明かりを中心に、180度近いパノラマが広がる。
山頂に整備された展望台の室内は、22時まで営業している。屋上は24時間開放されていて、駐車場も24時間営業しているため、車があれば山頂まで時間を問わずアクセスできる。室内はガラス張りなので、撮影には映り込み対策が必要になる。撮影がメインなら迷わず屋上に上がるとよい。
屋上には170ものLEDが地面に埋め込まれていて、幻想的な雰囲気の中で撮影が楽しめる。街明かりが最も美しい東向きは特に人気があり、三脚を構えた写真愛好家や観光客の姿も多い。平日・週末を問わず、なるべく余裕を持って早めに到着したい。また、風の強い日が多いため、なるべく丈夫な三脚を持参するとよいだろう。機材が重くても山頂の駐車場まで車でアクセスできるため、撮影をメインに訪問するなら、車での訪問がお勧めだ。
東向きの長崎港方面を写す構図が人気。最も光量が多く、美しい夜景写真が撮れる。広角レンズで長崎港全体を写すのも良いし、長崎港の中心部を標準レンズや望遠レンズで狙うのもお勧め。街明かりは太陽が沈む西と逆になるため、それほどトワイライトタイムを重視する必要はないだろう。
次におすすめの方角は女神大橋が見渡せる南方向で、街明かりが少なく自然が生み出す地形に特徴があるため、トワイライトタイムを狙うとほんのり輝く街明かりと海や山のシルエットが浮かび上がり、幻想的な写真が撮れる。ホワイトバランスは「白色蛍光灯」や「白熱電球」など青みを強調する設定がおすすめ。
また、クルーズ客船の停泊スケジュールに合わせて望遠レンズで船を撮影する構図も面白い。望遠レンズでの撮影時はブレに気をつける必要があるので、ISO感度を気持ち高めに設定しておくと良いだろう。停泊スケジュールは長崎市の公式ホームページに掲載されている。
女神大橋のライトアップは、21時以降は段階的に減光し、23時には完全に消灯する。女神大橋の方角を撮影するなら、21時までに撮影を終えたい。
稲佐山以外にも、長崎市内には夜景スポットが多数ある。丘陵地帯に街が囲まれていているため光が集中していて、見晴らしの優れた場所が多いからだ。
稲佐山に次いで有名な夜景スポットとして挙げられるのが、稲佐山の反対側から長崎港を眺望する「鍋冠山」だ。西向きに長崎港の夜景が見渡せるため、トワイライトタイムを狙えば、より美しい夜景を撮影できる。2016年4月に展望台がリニューアルし、観光地としての整備も進められている。また、ベイエリアもライトアップされていて、「長崎水辺の森公園」からは停泊するクルーズ客船や女神大橋のライトアップを撮影できる。「女神大橋」の歩道からも長崎港が一望できるため、稲佐山とあわせて様々なアングルから長崎の夜景を楽しめる。
岩﨑拓哉
夜景写真家。1980年大阪府出身。法政大学経済学部卒。神奈川県川崎市在住。 総合・国内旅行業務取扱管理者(資格取得)。照明学会認定・照明コンサルタント。 2003年より夜景写真家として活動。翌年より夜景専門サイト「夜景INFO」「夜景壁紙.com」などを開設(合わせて年間約1,000万PV)。 日本全国・海外約2000カ所で夜景を撮影し、セミナー講師、出版物など夜景特集の監修も手掛ける。
主な出演メディアとしてNHK@首都圏「ひるまえほっと」、NHK BS「絶景! 感動! 東京湾ナイトクルーズ」、BS JAPAN「日経プラスワンをみてみよう」、日経新聞プラスワン、朝日新聞、東京新聞、Yahoo Japan!「花火大会&夏祭り特集 2014」など。