第6回 「正常色覚」が本当に有利なのか

「ひとつの解釈は、僕たちの観察は、サルが果実のすぐ近くに行ってから先の行動を見ているんですね。一旦近くまで行ったら、色覚型の優位性ってほとんどなくなっちゃうんじゃないかというものです。それから、臭いをよくかぐんですけど。これ熟してもあまり色が変わらなくて葉っぱと見た目が似ている果実の方をよく嗅ぐんです。3色型も2色型も同じです。つまり、眼で見てよくわからないのは、臭いをかいで、その結果として食べたり食べなかったり決めると。使える感覚は何でも使って採食を行っていると。言われてみれば当たり前のことがわかったんですけども、要するに3色型がすべてを決定しているキーではないということですね」

 研究はさらに続く。

「実は、2色型のほうが良いという事例まで見つかってきたんです。それは昆虫を食べる時です。2色型色覚は確かに赤・緑の色コントラストに弱いけれども、逆に明るさのコントラストや形や形状の違いに非常に敏感なんです。それで、カムフラージュしているものに対しては2色型のほうがより強いと。それで、単位時間当たりにどれだけ昆虫をつかまえたかというのをオマキザルで実際に調べたら、2色型のほうが良いとわかりました。特に森の中で日が差さない暗いところに行けば行くほど、2色型が有利で、3倍近く効率がいいんです。統計的にもきちんと有意です。これは、アマンダ・メリンさんが学生時代から頑張ってとってくれたデータです」

(画像提供:河村正二)
[画像のクリックで拡大表示]
森の中でノドジロオマキザルが昆虫を1時間に何匹捕まえたか(捕獲率)を調べた結果。縦軸が捕獲率で、横軸が左から日向、日陰、森の中から空が見えない暗い状態。棒グラフペアの茶色(左)が2色型で、緑色(右)が3色型。(画像提供:河村正二)(Melin, A.D., Fedigan, L.M., Hiramatsu, C., Sendall, C.L., & Kawamura, S. (2007). Effects of colour vision phenotype on insect capture by a free-ranging population of white-faced capuchins (Cebus capucinus). Animal Behaviour, 73 (1), 205-214のFigure 2の改変)
[画像のクリックで拡大表示]

 野生の動物で2色型のほうが有利であったというデータはこれが初めての報告だったので、この研究は、「サイエンス」誌のオンラインニュースに内容がピックアップされて紹介されるほど話題を呼んだ。

 こういう2色型有利の結果が出る理論的な説明として、非常に興味深いものがあるので紹介する。

次ページ:カギはやはりヒトのオプシンにある?