第6回 「正常色覚」が本当に有利なのか

「そこで、行動観察もちゃんと数値化することにしました。果実を発見してから食べるまでの流れを考えると、まず見つけるところから始まりますね。これを『発見』とします。それからかじったり、臭いをかいだり、触ったり、じっと見つめたりして確かめる。これをインスペクション、『検査』。それから最終的に食べるか、口に入れてからペッと吐き出すか、あるいは食べずにポンと捨てるか。これを『摂食』。そういったふうに定義して、単位時間当たりにどれだけのことをやるか割り出してみたんです。果実検出の頻度ですとか、正確さ、そして、時間あたりで考えたエネルギー効率ですとか。さらに、嗅覚にどれだけ依存するか。けっこうサルはよく臭いをかぐので、気になりだして、これも観察して評価しました」

 その結果、驚くべきことが分かった。理論的には、3色型が有利になって然るべきなのだが……。

「予想に反して、3色型と2色型に違いがまったくありませんでした。さきほどの3つの行動指標のどれでも、まったく差がない。どういうことだというので、結局あれこれやってわかったことは、実は明るさのコントラストが一番利いていたということになったんです」

クモザルにとっての輝度の見え方を示した図。横軸が輝度。全体として果実と葉の輝度は重なっているが、部分部分でみると違うところも多い(赤い果実は葉よりも暗い傾向がある)。(画像提供:河村正二)(Hiramatsu, C., Melin, A.D., Aureli, F., Schaffner, C.M., Vorobyev, M., Matsumoto, Y., & Kawamura, S. (2008). Importance of achromatic contrast in short-range fruit foraging of primates. PLoS ONE, 3 (10), e3356のFigure 4を改変)
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 これは、えええっ、というくらい驚きの結果だ。

 だって、3色型の色覚なら背景の葉っぱから、果実の赤がポップアップして見えて有利なはずではないか。明暗だけをたよりにしても区別しにくいのではなかったのか。

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