第4回 なぜ霊長類はまた3色型色覚を獲得したのか

 なにかこれですっきり説明できてしまった気がする。ストーリーとしてとてもよくできている。河村さんの研究でも、狭鼻猿類、つまり、ヒトに近い類人猿やニホンザルのグループは、「恒常的な3色型」で、森の中で果実を見つけやすい。

「類人猿やニホンザルを含む狭鼻猿類の3色型色覚は、非常に保守的なんです。つまり、非常によく保存されていて、例外が少ないという意味です。恒常的3色型といいます。僕たちの研究では、東南アジアの小型類人猿テナガザルを調べました。生息地の東南アジアのいろんなところからDNAサンプルを集めてきて、3属9種、個体数で152個体、まったく例外なく普通の3色型でした」

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 そして、河村さんたちは、集めたテナガザルのサンプルから、「3色型色覚が非常に強固に守られている」ことも、しっかりと示した。この話は、さらにさっきまでのストーリーを補強するもので、やっぱり、霊長類は3色型色覚が有利よね! という話になる。

 ところが!

 ヒトのことを考えると、とたんに「景色」が変わる。

 というのも、ヒトはバリバリの「狭鼻猿類」なのに、はっきりと「色覚多型」があるからだ。つまり、3色型ではない個体(人)が、普通に混じっている。

「ヒトをサーベイすると、通常の3色型色覚だけではなくて、緑オプシンと赤オプシンの遺伝子の前半と後半が組み換わったハイブリッド・オプシンが、50パーセント近く見られます。こういうのは、テナガザルを150個体以上みても、1個体もいませんでした」

 混乱した。

 ヒトの50パーセントが、テナガザルにまったく見られなかった「ハイブリッド・オプシン」を持つという。緑オプシンと赤オプシンの遺伝子の前半と後半が入れ替わったものだ。これって、つまり、「色覚異常」ということなのではないのだろうか。ヒトの半分が「色覚異常」、というのは聞いたことがない。

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