第3回 魚の色覚はすごい!

「どうして魚類がそれだけ各タイプを多様化させるのかということですが、それは水中の光環境が非常に多様だということであろうと考えています。水深によっても届く光の波長がずいぶん変わってくるし、大洋とか深海溝でも違います。バイカル湖みたいな非常に広くて深い、透明度も高いような環境と、河川、ふつうの湖とか沼というところでも、透過できる波長や水深がまったく違ってきます。海ですと、だいたい400数10ナノメーターくらいの光が最も透過性がよくて、あとは吸収されたりしちゃう。目に飛び込んでくるのは残った波長だけだから、海は青っぽく見えると。湖や川の水が何となく緑っぽく見えるのは、より長波長にシフトしていて、それは植物プランクトンとかいろいろなものが混ざっているからですね」

大洋や河川、あるいは植物プランクトンが多いのか動植物の老廃物が多いのかなどの違いによって、波長が透過する深さがそれぞれ異なる。(画像提供:河村正二)(Levine, J.S., & MacNichol, E.F., Jr. (1982). Color vision in fishes. Scientific American, 246, 140-149より改変)
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 色覚の起源は、浅瀬で明暗が変わりやすい環境だったという話があったけれど、ここでは魚類というグループとして見た時の環境の多様性が、色覚の多様性を維持している、みたいな話だと理解した。個々の種では、それほどではなくても、魚類全体では、いろいろな色覚があるのだろう。いかにも、ありそうなことだ。

 などと、思っていたら、実は同じ種、それどころか個体レベルでも多様な色覚がある! ということがすぐに判明した。

「ウナギとかサケみたいに、海と川を行ったり来たりするものもいますよね。彼らは、海にいるときはより短波長のセット、川に来たらより長波長のセットに切り替えたりするんですよ。網膜上に発現してくる視細胞が違ってくる、と」

 これは、すごい。

 たしかに海と川で周囲の光が違うなら、それぞれに最適化した視物質のセットを持った方が有利だろう。それを実際にやっているとは!

 魚類の色覚の神秘はそれだけではない。河村さんみずからの研究室で手がけている研究でも、非常に面白いことがわかっている。

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