第2回 「色」は光にはなく、脳の中にある

 ヒトの、ひいては脊椎動物の色覚について、前回は基礎固めをした。

 網膜にある視細胞には、桿体(かんたい)と錐体(すいたい)があって、桿体は薄暗いところでの「薄明視」用、そして、錐体は明るいところで働き、色覚に関係している。

 視細胞が光を感じ取るには、視物質が必要で、その視物質はオプシンというタンパク質と、レチナールという色素でできている。

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の河村正二さん。
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 レチナールの方は、脊椎動物ではだいたい決まったものが使われるので、様々な色覚の違いは、主にタンパク質のオプシンのバリエーションによってもたらされる。

 ヒトの錐体は、赤、緑、青の3色に対応するオプシンを持っている。

 とりあえずここまでが、前回の復習だ。

 では、これらのオプシンを使って、色覚というのはどんなふうに実現しているのだろうか。

 河村さんは、こういうところから説き起こす。

「まず、色というのはそもそも光線にくっついているものでもなく、物質についているものでもないということを理解しておいてください。例えば、虹は太陽の光が屈折率の違いから、波長がバラけたものですよね。我々にはそれらが、それぞれ違って見える。波長を識別する感覚があるということです。その波長の違いによって光線を識別できる感覚が色覚です。別に色が光線にくっついているわけではないんです。識別しているということは、つまり脳が色を塗っていると思ってください」

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 このあたり、ぼくたちには「見えるようにしか見えていない」わけで、「色」と「光の波長」を混同しがちだ。また、「色」と「光の波長」を混同して語っても、現実的には問題ない場面も多いだろう。しかし、今、ぼくたちはまさに「色覚」について語っているので、「光」と「色」は、いったん区別した方がいい。河村さんの言うとおり、「色は光線にくっついている」わけではなく、「物質にくっついている」わけでもない。むしろ、光の波長を識別する能力に応じて、「脳が色を塗っている」わけである。

 とすると、どんなふうにぼくたちは、光の波長を識別しているのだろうか。

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