第1回 色覚はなぜ、どのように進化してきたのか

 最初は、ぼくたちヒトの目の断面図から。

「目の奥にある網膜に、光を感じるセンサーとなる細胞があるのはご存知ですよね。視細胞といいます。大きく分けて2種類あって、桿体(かんたい)細胞と錐体(すいたい)細胞」

ヒトの目の断面図。右側の四角いイラストは網膜の拡大図だ。(画像提供:河村正二)(Hubel, D.H., Eye, Brain, and Vision. Scientific American Library, New York (1988)の37ページの図を改変)
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 網膜は眼球の奥にある層状のもので、それを細かく見ると、手前からガングリオン細胞だとか、双極細胞だとか、水平細胞だとかが並んでいる。それらがどんな役割を果たしているかはここでは触れない。むしろ、それらの奥にある、桿体細胞と錐体細胞に注目する。これらが、光を感じる細胞、いわゆる視細胞なのだ。

 おやっ、と思うのは、眼球のレンズである水晶体から見て、視細胞の手前にいろいろ別の細胞があることだ。邪魔ではないかと心配だが、これが脊椎動物のスタイルだという。タコやイカではこんなことはない。脊椎動物は初期のたまたまのデザインをそのまま踏襲して引き継いでいるのだろう。一見不合理に見えつつもそれほど問題でもないようで、今もそのままになっている。

 そして、視細胞に集中しよう。

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棹体細胞(左)と錐体細胞(右)。1が外節部分。英語ではそれぞれrod cellとcone cellだ。左:By Cone2.svg: Madhero88derivative work: Ahnode (Cone2.svg) [CC BY-SA 3.0 or CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons 右:By Distorted (Own work, Image based on File:Cone cell.png) [CC BY-SA 3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

「桿体、錐体は、どちらも非常に複雑で特殊化したかたちをしています。外節部分と呼ばれるところに、すごく入り組んだ膜構造があります。桿体の場合は円盤状の膜構造体がぎっしり詰まっている。錐体の場合は細胞膜そのものが入り組んでいる。ここの部分の膜に、光のセンサーの分子が埋まっています。入り組んでいることで表面積をかせいで、よりたくさん埋め込むことができるわけですね」

 なお桿体の桿は、棒のような形を指す。飛行機などの操縦桿の「桿」だ。一方、錐体の「錐」は、文字通りキリのように尖っている。それぞれ形のまんまの命名だ。

 では、それぞれの機能に違いはあるのだろうか。

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