第1回 色覚はなぜ、どのように進化してきたのか

「はっきりと色覚を持つのは、いろいろな動物の中でも、昆虫などの節足動物と、われわれ脊椎動物だけです。じゃあ、イカやタコはどうなんだというと、レンズは脊椎動物と似たものを持っていますが、色覚の証拠は今のところありません。脊椎動物は、魚類から霊長類まで、共通祖先の段階で色覚を持っていて、それが進化に大きな役割を果たしたと考えられています」

 どうして、ぼくたちの世界は色彩にあふれているのか。色覚が脊椎動物の進化にとって、ひとつの鍵となる感覚だったという話。魚類も、哺乳類も(その中の霊長類も)、それぞれ、色覚について様々な工夫を繰り返してきた。ダイナミックな進化の物語として、興味深そうだ。

 さらに──

「色覚の場合、実験室での遺伝子レベルの研究から、野生の生息地で動物たちが色覚に応じてどう行動しているのかということまで、ひとつながりにして確かめることができるんです。つまり、遺伝子と進化というテーマに、遺伝子を配列レベルで議論する分子生物学からも、フィールドの行動学からも切り込むことができるわけです」

 遺伝子の進化と、遺伝子が発現した形質の進化や、それに応じた行動、というのはもちろんセットになっている。理屈の上ではそうだ。でも、これまで、それらを同時にきちんと見て確かめることが難しかった。河村さんは、色覚というワントピックから一点突破して、その様子を垣間見ることに成功した数少ない研究者の一人だ。これまた、どういう内容なのか、興味がつきない。

 それでは、しっかりとお話をうかがっていこう。

色覚は脊椎動物の進化において大きな役割を果たしたという。
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