イスラム教徒に課された五つの義務

 イスラム教の国々といえば、内戦やテロなどで最近何かと耳目を集めているイメージですが、けっしてそうした国ばかりではありません。アフリカや中央アジア、東南アジアにはムスリム(イスラム教徒)が多数を占める国が多くあり、日本に滞在するムスリムも増えています。

 世界全体でみると、キリスト教に次いで多くの信者がいるイスラム教ですが、ムスリムの暮らしとなると意外に知られていないのではないでしょうか。そもそもムスリムになるとはどういうことなのか、『教養大事典』のイスラムの項をめくってみると、「イスラムの生活」というページがあり、すべてのムスリムの成人男性に課された宗教上の義務が紹介されています。イスラムの聖典コーランにもとづいて定められた「五行」を実践する義務です。順番に見ていきましょう。

信仰告白

 第一に、信仰の告白(シャハーダ)を行うこと。
 これはイスラムを認める、すなわちムスリムになるということの表明で、「アッラーのほかに神はなく、ムハンマドはアッラーの使徒である」という意味のアラビア語を言います。たんに言葉を発するだけではなく、真の信仰をもって行われる場合に限って効力をもつとされています。

礼拝

 第二は礼拝(サラート)すること。
 太陽の位置によって決められた時間に、日に5回行います。まず礼拝の前に体を洗い清めます。そのため、すべてのモスクには礼拝の前に体を清める場所があります。祈りの場を清潔に保つために靴を脱いでモスクに入り、「ミフラーブ」という壁のくぼみで示されている、メッカのカアバ神殿の方向に向けて祈ります。
 イスラム圏に旅行をすると、この礼拝の呼びかけを日に何度も耳にすることになります。今日では、礼拝の合図として携帯電話も活用されているそうです。
 金曜日の午後にはモスクに集まり、皆でイマーム(宗教の指導者)に導かれて祈ることになっており、ムスリムはできる限り参加する義務があります。モスクの中では、男女の場所は分けられています。

喜捨

 第三は、貧しい人々に寄付する慈善活動(ザカート)です。
 こうした行為は神の意にかなうとされています。現代のザカートは、価値ある目的や貧しい人々のために財産を年ごとに分け与える誓いという意味合いになっています。

断食

 第四はラマダンに行う断食(サウム)です。
 ラマダンとは、月の満ち欠けによって決まるイスラム暦の第9月のことで、断食自体を指す言葉ではありません。29日ないし30日間、日の出から日没まで、健康な者は飲食、喫煙、性交を断つことが求められます。断食は、自制心、思いやり、神への意識を養うことを目指しており、その目的は苦行ではありません。
 また、病気などにより通常の断食ができない場合は免除されています。その代わり、できる範囲で貧しい人々への喜捨の形で補完することが求められます。

巡礼

 第五は、すべてのムスリムが少なくとも一生に一度、無理のない範囲でメッカへ巡礼(ハッジ)に出かけることです。
 ハッジは第12月に行う大巡礼で、それ以外を小巡礼といいます。メッカへの巡礼は預言者ムハンマドの生涯をたどる儀式であるため、その足跡をなぞる形をとります。
 巡礼者がその周りを回るカアバ神殿には大きな黒い石がはめこまれており、ムハンマドによって異教徒の神々から清められた信仰を象徴しています。
 今日のハッジは、ガイド付きのパッケージツアーもさかんに利用されています。2008年には、160カ国から300万人近い巡礼者がメッカに訪れました。

イスラム教は、ユダヤ教、キリスト教と密接な関係をもった宗教だ。
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