長い発掘で、みんな疲れがたまっている。毎日の重労働。手作業で崖を崩し、大量の土砂を運んでいるのだから、無理もない。フィルはみんなに意見を聞いた。「明日の予定ですが、気分転換に、キャンプ地から離れた調査や発掘をしましょう。キャンプ地から車で30分くらいのところへ行きます。プロスペクト(新しい化石を探す作業)か、セントロサウルスの頭骨を掘るか、どちらがよいか聞くので挙手してください。それでは、プロスペクトに行きたい人・・・」

 すると、みんなうれしそうな顔をして手を挙げる。聞いた話によると、セントロサウルスの頭骨の化石はかなり良いものらしい。にもかかわらず、みんなそちらよりも、プロスペクトがしたいという。新しいものを探し、見つける楽しみはよくわかるが・・・。

「それではみんな、明日はここから少し離れたところに行って、プロスペクトをしよう。ただ、セントロサウルスの頭骨も掘らなければいけないので、発見者のスコットは私たちと一緒に来てくれ。ヨシも来てくれるか?」
 私は「もちろん」という気持ちを込めてうなずく。しかし、スコットはちゃんと聞こえているはずなのに、「僕が行くのですか?」と聞き直す。よっぽど、みんなと一緒にプロスペクトに行くのが楽しみだったのだろう。

いざ、セントロサウルスの頭骨の発掘へ

 次の日、私たちは何台かの車に分かれてキャンプを離れた。私は助手席に乗り込む。フィルが運転し、フィルの妻のエバとスコットは後部座席に座った。

「今から掘り出す頭骨は・・・」
 スコットは後部座席から身を乗り出して、話しはじめた。「僕の彼女とプロスペクトをしている時に見つけんたんだ。斜面にオレンジ色の三角錐のものが突き出ていて。遠くから見ても、一目でケラトプシア類の角だってわかった。ちょうど日が差していて、オレンジ色に光ってすごくキレイだった。近づいてみると、角の表面に地衣類がびっしりとついていた。オレンジ色はその地衣類の色だったんだ。2人で角の周りを掘ってみると、頭骨が丸ごと埋まっているってわかった」

「すごいね。そんなにすごい頭骨が見つかるところなのに、なぜみんな来たがらないの?」
「このあたりはきれいな地層が露出している。でも、斜面がきつくて歩きづらい。それに、なかなか化石が見つからない。だからみんな来たがらないみたい。他のみんなが今日行くところは、骨がたくさん落ちていて、プロスペクトしていても楽しいしね」

セントロサウルスの頭骨の発見現場を探すスコット。急な崖に行き場を失っている。
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 しばらくすると、フィルは車を止めた。「着いたよ。みんな、スコップかツルハシを1本ずつ持って」

 私が2本持って行こうとすると、フィルが私の手を止めた。「エネルギーがあるのはわかるけど、1人1本ずつだよ。セントロサウルスの頭骨を掘るのに必要だから持っていくだけでなく、違う目的があるんだ。ガラガラヘビが結構いるから、草むらがあったらそれで突いて、いないのを確認してから進むんだよ」
「了解」

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