第11回 美しい頭骨を掘りたがらない理由
※2015年の発掘シーズンが終了しました。今回は、第6回・第7回で紹介していた、カナダ・恐竜州立公園での発掘調査の続きです。当初ケラトプス科と考えられた恐竜の全身骨格化石ですが、発掘を進めると、ハドロサウルス科であることが判明。ニックネーム“ハドロケラトプシア(ハドロサウルス科とケラトプス科を合わせた造語)”の発掘は続きます。
「まあ・・・それでも全身骨格は全身骨格だからね」
カナダ、アルバータ大学のフィリップ(フィル)・カリー教授は、地面に座り込み、周りの石を取り除きながらつぶやく。「取りあえず、明日以降もこの骨格の発掘は続けよう。アロン、この“ハドロケラトプシア”の発掘をお願いしていいかな。何かわからないことがあったら相談して」
この公園には、まだ発掘されるのを待っている恐竜骨格がたくさん眠っている。実はこの時点で、キャンプ地周辺には、セントロサウルス(ケラトプス科の仲間)のボーンベッド(不完全な骨が1カ所に集まった状態。第6回参照)と、幼体が含まれるケラトプシア科のボーンベッドがあった。少し離れたところでは、セントロサウルスと思われる美しい頭骨も発見されていた。これらすべてを発掘するには、限られたメンバーで協力し、効率よく作業しなければならない。
比較的多く発見されているハドロサウルス科であることが確認されたので、私たちは次の発掘地を確認しに行くことにした。この“ハドロケラトプシア”の露頭(地層や岩石が、土壌や植生に覆われず、直接地表に現れている場所)は、発見者であるアロンが担当となって、この夏が終わるまでに、ある程度目処を付けなければいけない。その重要な役目を、フィルはアロンにお願いしたのだ。