※前回まで:2015年8月はモンゴル・ゴビ砂漠の調査に出かけた小林さん。2011年8月に発見した恐竜の営巣地の調査に決着を付けるべく、現地へ向かいます。
モンゴルは今年もいい天気だった。車に乗り込み、調査地に向かう。
話によると、今年のモンゴルは雨が少なかったが、私たちがモンゴル入りする前に、数日間連続して雨が降ったという。そのせいか、いつもよりも緑が多い。
「テメー!」
一緒に乗っていたモンゴル人が叫ぶ。決して怒っているわけではない。モンゴル語でラクダのことを「テメー」というのだ。
彼が言うように、ずっと先の方にラクダが見える。何頭か集団でたむろしているようだった。ラクダたちは草むらに座り込んで、リラックスしている。私たちの車が近づいていくと、その音でいらついたように立ち上がるものもいれば、何事もないように座ったままのものもいる。コブがしっかりと張っている。食べ物を十分に食べて、脂肪を溜め込んでいるのだ。
「あと、どのくらいかかる?」
モンゴル人のドライバーに聞いてみると、2時間ほどだという。私はGPSユニットを取り出し、現在地を確認する。直線距離にして40キロほどだろうか。舗装された道がないため真っすぐ走ることができず、路面の状態もあまり良くないので、時間がかかる。
いつも驚かされるのだが、モンゴルの人々はGPSユニットも見ずに、ちゃんと目的地に着く。まったく目印になるものがないこの砂漠で、方向感覚と距離感をしっかりともちながら、運転できるのだ。その秘訣をちゃんと聞いたことはないが、おそらく太陽の位置や遠くに見える山、町と町を結ぶ電線などを目印にしているのだろう。
それにしても、モンゴル人には方向音痴がいないのではないかと思う。遊牧民のDNAがあるからだろうか。