一方、いろいろな恐竜や他の脊椎動物が混ざった状態で骨が密集している層を、「マルチタクシック・ボーンベッド」と呼ぶ。こちらからワニの鱗板骨(りんばんこつ)、あちらからティラノサウルスの仲間の歯。さらにオルニトミムス科の末節骨(まっせつこつ)や魚の歯、というように、さまざまな動物の骨が同じ地層に集まっている。一見、化石としてはそれほどきれいでもないし、完全でもない。しかし、これによって、同じ時代の環境に、どのような動物が一緒に生息していたかがわかるのだ。

化石の宝庫「バッドランド」は危険がいっぱい

 「結構暑いな」
 目の前に広がるバッドランド。6年ぶりの恐竜州立公園だが、5月の終わりということで、ここまで暑くなることを予想していなかった。厳しい日差しが、地面を照り返す。

 地層を観察し、化石の出そうなところをめがけて、崖を降りていく。厳しいところもあるが、ちょっとしたハイキングのようでもある。ただ、気をつけなければいけないのは、思わぬところにたくさんの落とし穴があることだ。当然ながら人が作ったものではなく、自然にできた「落とし穴」で、シンクホールと呼ぶ。

 シンクホールができる仕組みはこうだ。激しい雨が降ると、小さな川が所々に現れる。落差の激しいところには滝ができ、地面をえぐっていく。深く彫り込まれたくぼみには、次々と水が流れ込み、しまいにはトンネルを作ってしまうことがある。このトンネルが厄介で、表面から見るとただの地面なのだが、よく見ると下がない。薄いところを歩いたりすると、地面が崩れ、落ちてしまう。
 そーっとそのシンクホールの中をのぞくと、骨が散らばっている。いろいろな動物がシンクホールに落ちて、死んでしまっているようだ。自分もその仲間にならないように、気をつけながら歩く。

 しばらく歩くと、地面にバラバラになった骨が落ちている。どの動物かわからないほど断片的になっているが、恐竜の骨であることは間違いない。その近くには、肉食恐竜の歯があった。ティラノサウルス科の歯だ! 肉食恐竜の歯を見つけるのは快感だ。表面のツルっとした質感、ステーキナイフのようなギザギザな鋸歯(きょし)が、いかにも「恐竜の化石です!」と主張しているようにも思える。

 顔を上げると、カメの甲羅の一部が1つ、その先には魚の骨が1つと、骨が転々と落ちている。すべて同じ地層(層準)からだ。これは間違いなくボーンベッドだ。もう少し詳しく言うと、先に挙げたマルチタクシック・ボーンベッドということになる。地面に這いつくばり、さらに何か落ちていないか、目を凝らして化石を探す。

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