そこで、噛み砕いて説明しようとするのだが、なかなかうまくいかない。

記者:この恐竜は、どういった点が今世紀最大の謎なのですか?

私:大きな腕しか見つかっておらず、全貌がわかっていなかったのです。恐竜研究者の間では、恐竜研究最大の謎と言われています。

記者:大きな腕の何が謎なのですか?

私:腕の長さが2.4メートルもあり、獣脚類恐竜のなかでも非常に大きな腕です。このような大きな腕をもっている獣脚類恐竜が、どのような姿形をしていたのか、どのような生活をしていたのか、あらゆる研究者が解き明かそうとしてきました。しかし、これまで発見されていたのは腕だけで、よくわからなかったのです。そして、私たちがようやく全身骨格を発見し、全貌が明らかになりました。

記者:・・・なるほど。

 いまいち伝わっていなかったような気がする。

 優秀な日本人研究者が、世の中を変える大発見をしている。例えば、青色LEDやiPS細胞。私たちの生活を変える大発見だ。このような研究こそ、必要とされ、人のためになる研究である。大発見の内容もわかりやすく、実生活に変化が起こるため、実感しやすい。
 しかし恐竜の大発見はというと・・・なかなかわかりづらいものだ。

恐竜研究は、人のためになっているのか

 先の「先生にとって『大発見』とは何ですか」という問いに、私は次のように答えた。

 「私たちの研究分野である恐竜は、非常に主観的です。デイノケイルスに謎が多いというのも、私たち恐竜研究者がそう言うから、謎だということになっていました。今回発表した発見についても、権威者がそう言うのだから大発見に違いない、世界最高峰の科学誌ネイチャーが論文を掲載するのだから大発見に違いないと、専門家でない多くの人々は考えるでしょう。言い方は悪いですが、専門家の言うことを信じるしかない。
 そうなると、『大発見』とは、私たち専門家次第ということになってしまいます。専門家が『これは大発見だ』と言えば、大発見になってしまう。言い換えると、私たちが大発見を作り出してしまっていることになる。

 しかし、私が考える大発見とは、実は私たちの身の回りに転がっていて、データも現象も見えているのに、それが他とは違う特別なものだと気づいていなかったことに『気づくこと』なのです。大事なのは、大発見を大発見として認識する能力を高め、それを他の人にわかりやすく説明できるかだと思います」

 つまり、「大発見」の基準は相対的なもので、ノーベル賞を受賞するような発見でなくても、ネイチャーに掲載されるような発見でなくても、自分が大発見だと思えば、大発見なのだ。これは私だけではなく、皆に言えることだと思うし、サイエンスの醍醐味につながると思う。興味をもつこと、好きになることが重要であり、その先に、自分なりの大発見が待っている。

 私はサイエンス中毒にかかっている。サイエンスの面白さに病み付きなのだ。今年は、カナダ、アラスカ、モンゴルでの調査を予定している。私は、自分なりの大発見を探しに、世界へ足を運ぼうと思う。そして、恐竜研究の面白さのほんの一部でも、皆さんに届けることができることを願う。それと同時に、これを読んでいる皆さんにも、外に出て新しい第一歩を踏み出すことで、自らもエクスプローラーとなり、自分なりの大発見をしてほしいと思う。

将来の恐竜研究者とのツーショット。恐竜研究者を目指す、札幌市在住の八丁目清之くんと。
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