恐竜は、老若男女、国籍も問わず、人気がある。「興味がない」という人はたくさんいるだろうが、「恐竜が大嫌い」という人に出会ったことはない。そして、たくさんの子どもたちが恐竜に興味をもつ。「子どもの時、必ず一度は通る道」と言う人もいる。

 サイエンスは面白い。恐竜に限らず面白い。
 ある疑問をもつ。その疑問にいかにアプローチするか作戦を立てて、データを集めていく。すると、自分なりの仮説が生まれていき、その疑問が明らかになる。自分の手でだ。これが快感なのである。

 一方で、サイエンスにあまり興味のない人々もいる。それは、サイエンスというものに、十分に足を踏み入れていないからだと思う。興味のない人々にとってサイエンスとは、「難しい理論や公式であふれ、理解困難なもの」なのだろう。
 しかし、そうではないと私は思う。いったんサイエンスの入り口に足を踏み入れ、自らの手で謎を解く快感を知ると、その面白さのとりこになり、抜け出すことができなくなってくる。問題を解決したかと思うと、新しい問題が現れる。興味や探究心は尽きることなく、ぐいぐいとサイエンスという重力に引き込まれていく。

 その入り口の一つに「恐竜」があると思う。恐竜を通して、サイエンスの楽しさや重要性にたどり着いてもらえることを望んでいる。

「大発見」を伝えることの難しさ

 ある取材で「先生にとって『大発見』とは何ですか」という質問をぶつけられたことがある。なかなか良い質問だった。

 私はこれまで多くの大発見をしてきたつもりだ。フィールドを歩き、新しい恐竜を発見したり、新しい知見を考え出したりする。しかし、自分自身はその発見に興奮していても、その気持ちはなかなか伝わらない。プレスリリースを出すと、メディアの人たちが取材に来る。私は自信満々にその重要性を語り出すが、どうも記者の人たちは私の言っていることに付いてきていないのが、ありありとわかる。

私たち研究チームが解明した、「恐竜研究最大の謎」と呼ばれてきた恐竜、デイノケイルスの生態復元図。(Illustration by Kayomi Tukimoto)
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 例えば、ナショナル ジオグラフィック日本版2015年4月号に取り上げられた恐竜、デイノケイルスの発見も然りである。私たち研究チームは、デイノケイルスの全身骨格の発見を、科学誌「ネイチャー」に論文として発表した。ネイチャーに掲載されるのだから「大発見」であるはずだし、重要な研究であるはずだ。
 私が用意したデイノケイルスの論文の要旨をまとめたプレスリリースでは、「研究成果のポイント」の最初の2つに以下を挙げた。

1. 今世紀最大の謎の恐竜デイノケイルスの全身骨格を2体発見
2. デイノケイルスの分類・系統的位置が判明し、オルニトミモサウルス類であることがわかった

 これを読んで、皆さんはその重要性が理解できるだろうか。非常にマニアックなので、よほどの恐竜好きでなければ、ピンとこないのではないか。

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