「アルバータ州からはセントロサウルスがたくさん発見されているしね。この頭骨を掘るのは、研究用というより、どちらかというと展示用かな。ここまできれいに保存されている頭骨はあまりないからね」
 フィルは私の目を見ず、バッグの中にある発掘道具を探しながら言った。

 彼らにとって、ケラトプス類の化石は珍しいことではない。しかし私にとっては、これだけ大型で保存状態の良いケラトプス類の頭骨を発掘するのは、初体験だった。

 そこで、あることを思い出した。以前、カナダの研究者が私たちのモンゴルの調査に参加した時、テリジノサウルス類の化石に異常に反応していたのだ。

北米とアジアで異なる恐竜の多様性

 モンゴルではテリジノサウルス類の化石は比較的豊富で、よく発見される。私たちにとっては「またか」というくらいだが、カナダをはじめ、北米の人たちにとっては、とんでもなく珍しいものだった。

 その逆バージョンで、彼らにとって珍しくない大型のケラトプス類は、アジアではほとんど発見されたことがない。実際、私自身、アジアで発掘したことはない。今までに経験したことのないことが、あの感動と興奮を引き起こしたのだ。

 私の研究テーマに、「アジアと北米の恐竜多様性の比較」というものがある。今回発掘しているセントロサウルスの生息年代は白亜紀末で、私がアラスカやモンゴルで調査しているのも白亜紀末。アジアの恐竜が北米に渡っていき、北米の恐竜がアジアに渡ってくる。
 ある恐竜は大陸間を無事に渡っていくが、ある恐竜は移動に失敗する。移動できなかった恐竜は、その大陸固有の動物となり進化していく。それゆえ、アジアと北米では生息していた恐竜に違いが出る。その好例が、白亜紀末に栄え、多様化した北米のケラトプス類とアジアのテリジノサウルス類だ。

 アジアと北米の恐竜に違いがあることを頭では理解していたが、この発掘によって実感できた。この実感が、感動と興奮によって現れたのだ。
「(まさに百聞は一見にしかずだな~)」と心の中でつぶやく。

 もうすでに、フィルとスコットは頭骨を掘りはじめていた。私もすぐに自分の発掘道具を取り出し、発掘に参加した。

 頭骨が埋まっている石は比較的軟らかく、掘るのは難しくなかった。石はきれいに剥離し、茶色く光る骨がみるみるうちに露出する。

セントロサウルスの頭骨をみんなで慎重に掘り出しているところ。スコットが説明したように、角には濃いオレンジ色の地衣類が付いている。
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