セントロサウルスの化石にかぶせていたジャケットを剥がす、フィリップ(フィル)・カリー教授と発見者のスコット。
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前回に続き、カナダ・恐竜州立公園での発掘調査です。発掘チームの1人、スコットが発見した、セントロサウルス(ケラトプス類)の頭骨をいよいよ掘り出します。

 カナダ、アルバータ大学のフィリップ(フィル)・カリー教授は、ナイフを手に取り、頭骨に近づいた。
「ちゃんと外れやすいように、ジャケット(化石を取り囲む母岩から露出した骨化石を、壊さずに運び出すために作るもの)には切れ目を入れてある。ここがそうだ。ジャケットと骨の間にはトイレットペーパーを詰めてある。この割れ目にナイフを入れて・・・」

 割れ目にナイフを刺し、ゆっくりと力を入れる。最初はビクともしないが、何度も揺らしていると、少しずつジャケットが外れていくのがわかる。
「あんまり強くやると、骨に圧がかかっているよ」
 スコットはそう言いながら手助けを始める。

 メリメリという音とともにジャケットが持ち上げられていく。さっきまで輪郭しか見えていなかった頭骨があらわになった。誰が見ても恐竜の頭骨とわかる。スコットが説明していたように、角には濃いオレンジ色の地衣類が付いている。

「すごい! すごいね! これはすごい!!」

 私は頭骨の周りをくるくる回り、ただひたすら「すごい」を連呼していた。カメラを取り出し、シャッターを何度も切った。私も20年近く恐竜の発掘調査をしているが、今までにない感動だった。

 感動の瞬間を満喫し、少し冷静になった頃、騒いでいるのは私独りだけだということに気づく。そして、フィルとスコットの冷ややかな目線を感じた。
「(この温度差は何だろう? みんなうれしくないのか?)」
 私は興奮を抑え、軽く咳払いをして平静を装う。

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