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 カナックに着くと、ケッダの兄弟のラスムシの家を訪ねて、私たちは犬たちの係留場所に案内してもらった。ウヤミリックは私のことを覚えていたらしく、綱を外してやると、舌を出してしきりにとびかかって来て喜びを爆発させた(ように私には見えた)。さすがに40日間にわたる厳しい旅を経験したので、犬は私のことをよく覚えており、私はそのことが嬉しかった。

 帰りは山崎さんの犬のチームに加えてシオラパルクまで橇を引かせたが、この1年間でケッダに鍛えられたせいか、去年のように途中でばてることもなく、村まで力強く走りとおした。去年は子供だったせいか少し大人しく、他の犬に対してもオドオドしたところがあり、特に全然吠えないことが番犬としての適性を欠いているのではないかと私を心配させたが、今年は大人になったのか、精神的にもたくましくなっており、他の犬に対しても怯むことはなくなったようだ。

 村に着いてからは不用意に近づいてくる他の犬に対してのどを唸らせて威嚇し、激しく吠えて、かみつくことさえあり、その成長ぶりが私を安心かつ興奮させた。喜びのあまり私は、「いけ、いけ! もっとやっちまえ!」などと囃し立てていた。

 4月10日頃をめどに、大人になったウヤミリックとともに、1回目のデポ設置旅行に出発することにしている。

角幡 唯介(かくはた ゆうすけ)

1976年生まれ。2002年~2003年に、長らく謎の川とされてきたツアンポー川の未踏査部5マイルを単独で探検、2009年~10年にも単独で踏査し、その全容を解明した。2015年に、北極の極夜(1日中夜が続く)の中、GPSを使わず六分儀を使った方法で、北極圏を1200~1300キロを単独で踏破する探検に挑む。著書『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、第42回大宅壮一ノンフィクション賞、『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞など受賞多数。著書はほかに『探検家、36歳の憂鬱』(文藝春秋)など。

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