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 本番の探検は11月に始める予定にしており、旅が始まるまで、ざっと半年以上の歳月がある。そのため出発するまで、村での日々は案外のんびりしたものになるのではないかと呑気にかまえていたが、実際に来てみると様々な仕事や準備が待ちかまえており、急き立てられるような毎日を送っている。たしかに本番の旅はまだまだ先の話であるが、それまでに春と夏に2回、本番の旅でつかう食糧や燃料をデポ(貯蔵)するための準備旅行に出かけなくてはならないからである。

 最初のデポ設置旅行は4、5月、橇をひいて村から氷河と氷床を越えて北に115キロほど歩いた先にあるアウンナトックの小屋に向かうことにしている。村に着いてからすぐに取りかかったのは、その春のデポ旅行のための準備だった。まず日本から輸送した食糧を仕分けし、燃料を用意し、木橇を組み立て、スキーにビンディングを取り付けた。テントや衣類関係の修繕も必要である。

 同時に、第二弾となる夏のデポ設置旅行のための準備も並行してこなさなければならない。夏の旅行はカヤックでおこなう予定だが、カナダのエルズミア島にもデポを設置することになっているため、出発までに入国の許可関係や持ち込み装備のリスト作りなどの事務手続きも済ましておかなければならないのである。また氷の状態次第では海に出るのは厳しくなるため、カヤックで航海できる時期についても地元の人にいろいろと話を聞かなければならない。

 こうした夥しい量の仕事にくわえ、日々の生活のための雑務もこなさなくてはならない。つまり、インターネット回線を引く手続きだとか、食料の買い出しだとか、日々を少しでも快適に過ごすために少しずつ居住空間を便利にする努力である。

 もっとも厄介なのは、毎日のように家に遊びにくる子供たちへの対応だ。とくに4月上旬のイースターは私にとってはほとんど災害に近かった。村の学校が休みとなるため、午前中から子供たちが遊びにきて、せっかくまとめた装備類を散らかしたり、1食400円もする日清カップヌードル――カナダでもグリーンランドでも極北の村では輸送費がかかるため、物価は日本の3、4倍する――を食べたりして帰っていくのである。村での滞在中の暇つぶし用にと、日本から40冊ほどの本を持ち込んでいたが、今のところ、それらはすべて単なる輸送費の無駄遣いに終わりそうな気配だ。

 シオラパルクに到着して6日後、初冬から村に腰を落ち着けて滞在している極地探検家の山崎哲秀さんと一緒にカナックに向かった。山崎さんはすでに20年以上にわたりグリーンランドや極北カナダで活動をつづけている犬橇のエキスパートで、このときにカナックに向かったのも彼が操縦する犬橇に乗ってのことだった。

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