第14回 デビルズ岬のペンギンロード

ナンキョクミドリナデシコは、他のエリアでは全く見つからなかったが、このデビルズ岬の丘では全体にパッチ状に生息していた。
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 ナデシコに気を取られていると、不意に丘の上からジェンツーペンギンが降りて来た。ところがそのペンギンは私たちに気づくと、慌てた様子で丘の上に逃げ戻っていった。驚いたのはお互いさまなのに、悪者が来たと言わんばかりに走って逃げなくたっていいじゃないか・・・と感じたが、まあ仕方がない。そりゃあ、彼らと同じく2本足歩行をする巨大な生き物が、突如目の前に立ちはだかったのだから。

 それにしても、ここ南極半島で暮らしているペンギンたちと昭和基地周辺で暮らしているペンギンたちとでは、かなり性格が違うように感じる。南極半島のペンギンのほうが勝ち気で人間に対する警戒心が強く、昭和基地周辺のペンギンはおっとり気味で警戒心もあまりない気がする。さらに言うと、南極内陸のアンターセー湖周辺にすんでいるユキドリは昭和基地周辺のユキドリよりもはるかに警戒心がない。昭和基地周辺のユキドリは人間がいるとすぐに岩の隙間に逃げ込むが、アンターセー湖のユキドリは我々が歩いていても逃げようともしない。

 やはり、南極の中でも南極半島エリアはちょっと特殊な南極である。ここは古くから人がよくやって来た場所であって、今も南極の中で極端に多くの研究者や観光客が訪れる場所だ。それに比べて、昭和基地周辺は1年に1度日本の観測隊だけが立ち入る場所であり、さらにアンターセー湖周辺にいたってはほんのわずかな人数の研究者チームがこの50年間で片手で数えられるくらいしか訪れていないような場所である。

 だから、エリアごとの動物たちの性格(人間に対する動物たちの反応)の違いが生じているのだろう。ここ南極半島エリアのペンギンたちは都会っ子、昭和基地エリアのペンギンたちは私のような田舎育ちの子、とでも言った感じか。さて、アンターセー湖のユキドリはなんと表現しよう・・・考えてみたが、しっくりくる例えが見つからないので、誰かよい例えがあれば教えてほしい。

 グヮーガーガーガーーー
 ピーピーピーピーー

 丘を登りきると目の前の視界が急に開け、騒々しい鳴き声とともに、所狭しとジェンツーペンギンの大群がひしめき合っていた。さらに海のほうへ目をやると、浜辺に向かう斜面にもまた、これでもかと言わんばかりにジェンツーペンギンが密集していた。